左から
朝永 正雄     HD 上席執行役員 サステナブル経営担当
田澤 直幹 氏 株式会社WILLEE 代表取締役
廣江 敏朗     HD 代表取締役 取締役社長 最高経営責任者(CEO)
白石 康人     HD 上席執行役員 総務・人事戦略担当

文中の肩書は、座談会当時のものです。
本座談会は2024年1月24日に、京都市の当社本社で行われました。

「その企業は人々の幸福と経済的な豊かさを両立していく姿勢を持っているか?」
昨今、企業がサステナビリティ(持続可能性)の実現を目指すにあたり「Well-being(心身の健康と幸福)」が重視されるようになっています。この視点には、企業が自社の事業活動によって社会に発展と幸福をもたらそうとしているか、自社で働く社員の心身を豊かにしているかという二つの側面があります。
SCREENグループでは、社会に対して「社会課題の解決に向けたソリューションを提供することで、社会と人々に新しい価値を創出し、持続可能な社会の発展に貢献する企業」であることを掲げています。そして、社内に向けては「社員一人ひとりが働く意欲を高め、成長が実感できる働きがいのある企業」の実現を目指して「健康経営」に取り組んでいます。
今回は株式会社WILLEEの代表取締役 田澤直幹氏をお招きし、当社の代表取締役 取締役社長(CEO)  廣江敏朗、サステナブル経営担当 上席執行役員 朝永正雄、総務・人事戦略担当 上席執行役員 白石康人を交え、健康経営の取り組み、および人財戦略との関わりについて意見交換を行いました。

健康経営に取り組む目的

SCREENグループにとって重要なトレンドの一つに「Well-being」を位置付け、その取り組みとして社員の健康維持促進を掲げています。この方針に込めた思いとは?

廣江 社会的価値と経済的価値を両輪としてSCREEN Value(企業価値)を高める上で「いかに社員がいきいきと働けるか?」ということが重要なポイントだと考えています。皆がいきいきと働けることが、より良い事業成果にもつながると考えており、そのような意味で「Well-being」というキーワードは事業経営、人的資本経営の両面において非常に重要だと認識しています。また、いきいきと働ける状態というのは健康でなければ実現できないと考えており、健康維持促進に取り組むことが企業価値の向上につながると考えています。

田澤 生産年齢人口の減少といった社会的なトレンドを踏まえ、改めて社員の心身の健康が重要視されています。企業が社員の健康維持・増進に取り組むメリットはとても多いです。心も身体も健康であり続けることで、社会で働くことの安心・安全が保たれますし、職場の仲間だけでなく家族や友人も含めた周囲とのつながりが増し、意欲に満ちた仕事・生活を送ることができるようになります。その結果、会社においては、ワークエンゲージメント※1の高い社員、いきいき働ける職場が増え、新規事業の創出や既存事業のバリューアップ、ひいては企業価値向上につながります。
このような意味で、働く社員のWell-beingを追求する貴社の取り組みは非常に理にかなっていると言えます。

※1 ワークエンゲージメント:
仕事に対してポジティブで充実した状態であることを示す。仕事に対する「活力」「熱意」「没頭」の3つの要素で構成される。 

SCREENグループは健康経営の推進に向けて「健康宣言」を実施しました。宣言に込めた、社員の健康と会社の目指すところへの思いは?

「SCREENグループ 健康宣言」

廣江 SCREENグループで働く社員が心身ともに健康であり、職場がそれを支えていく。それこそが事業を営む上での全ての基盤となります。社員と職場の両面から心と身体の健康づくりに取り組み、ワークライフバランスも含め、皆がいきいきと楽しく前を向いて仕事ができる環境を整えていきたいとの思いが「健康宣言」に込められています。そして、それらを通じて、社員一人ひとりにソリューションクリエーターとなってもらい、事業成果を最大化していきたいと考えています。

田澤 健康施策を実施する上でも、社員の健康に対する想い、健康経営の目指す姿について言語化した「健康宣言」という土壌があることが非常に大切です。こういった宣言をきっかけに、社員が自分自身の健康・Well-beingに向けた取り組みを進めていけるような環境が出来上がっていくのだと思います。

健康経営の取り組みと人財戦略

健康経営に取り組む目的とは?

朝永 健康経営への取り組みは、会社の基盤づくりだと考えています。「精神的」「肉体的」「社会的」という三つの側面から「トータルで健康であること」を意識し、個人と職場の両方へのアプローチを実施しています。これらの活動を通じて、心身の健康を損なう人をなくし、ワークエンゲージメントを向上させる、そしてその先の人財戦略につなげていくことを目的としています。

白石 社員の健康と人的資本に係る戦略は切っても切り離せません。健康経営には、ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメント※2の両側面からのアプローチが必要と考えています。
人財戦略を実践する上では、事業成長を支える人、いきいきと働ける環境について把握し、SCREENグループ全体でベクトルを合わせることが重要です。その意味で、2022年から始めたエンゲージメントサーベイ「Hearts」は重要な役割を担っていると考えています。2023年度調査において、Well-being・健康経営に関するカテゴリーで国内基準を上回る結果が出ましたが、これは「健康宣言」を受けて、会社の思いが社員に伝わった結果の現れでもあると見ています。今後も健康経営の取り組みと連携して、エンゲージメント向上に向けて取り組んでいきます。
また、いきいきと働ける環境整備、働きがいのある持続可能な環境づくりに向けて、多様な働き方の推進や、社員のチャレンジを後押しする人事・評価制度など、人事施策の面からも推進していきたいと考えています。

※2 従業員エンゲージメント:
企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識を持っていることを指す。

田澤 「働きがい」を感じることができる会社は、「働きやすさ」が高く、また「やりがい」つまりワークエンゲージメントの高い組織を指します。人事施策を通じては「働きやすさ」を高めることが中心となるため、人財戦略で目指している「働きがい」を向上させるためには、健康経営を通じた「やりがい」、ワークエンゲージメントを高めることも必要になってきます。人財戦略と一体となって健康経営を推進していくことが非常に重要です。

取り組み状況と今後の課題

具体的な健康施策の取り組み状況、健康戦略としての現在地は?

朝永 現在は、社員の健康意識向上、ヘルスリテラシー向上を目的に、多様なテーマに対して、網羅的に健康教育を実施するとともに、健康施策を推進する上で設定した「健康関連指標」の分析に基づき、データドリブンな施策の展開に取り組んでいる段階です。社員が抱える健康課題は一人ひとり異なるため、各々の課題に応じたアプローチを心掛けることで、施策への参加状況やヘルスリテラシーに関する指標において改善が見られています。
また、「健康増進のための9項目を実践し、いきいき健康に」という思いを込めて「いきいき9」というキャッチフレーズを作成しました。ロゴマークの作成や、「こころとからだ」と題した健康情報を提供する社内ポータルサイトの開設など、健康への意識付けの入り口の扉を軽くするような工夫にも取り組んでいます。「しないといけない」というアプローチではなく、自分自身の健康課題に気付いてもらうための工夫、健康への取り組みを試してもらうための工夫を重ねています。

「いきいき9」ロゴ、ピクトグラム

健康経営への取り組みをより推進していくための今後の課題は?

朝永 社員が健康を自分ごと化し、主体的に健康行動を取れるように「必要な人に必要な施策で支援できる」体制づくりを行っていきたい。そうした目標に向けて、まずは健康データの収集・分析を強化し、課題の明確化を図ること。そして、施策を展開できるようになることです。

田澤 主体的な健康行動の促進に向けては、健康行動の動機があること、健康行動の障壁がないこと、健康行動に取り組むきっかけがあることが重要です。健康診断以外のヘルスチェックの機会を設けるなど、「動機」を高めることが特に重要だと思います。また、データドリブンな取り組みを強化し、ある程度パーソナライズ化された施策を推奨するなど、PDCAではなく、CAPDを強化していくことが今後ますます必要になってきます。

白石 人財戦略に関しては、エンゲージメントサーベイや、今年度、企業理念浸透プロジェクトの一環として社長自らが国内外のグループ会社を訪問して実施してきたタウンホールミーティングを通じて、会社が目指す将来のありたい姿と社員が思っている将来の姿をいかに接続するか、ということが大きな課題だと感じています。また、同プロジェクトの一つである「車座」において、管理職が仕事の10%を「隣の人は何をしているか」「何に困っているか」ということに目を向け、会話をすることに使えば、会社はもっと良くなると思う、という意見がありました。会社と社員の思いをつなげていく上では、管理職の役割・意識についてフォーカスする必要もあると思っています。

廣江 私たち自身が幸せを感じ、いきいきと働くことができている状態というのは、お客さまに絶え間なくソリューションを提供できている状態ではないかと考えています。そのためには、主体的かつポジティブに物事に取り組むことが必要です。
健康データやエンゲージメントサーベイを活用しての分析を実施することや、タウンホールミーティングでの社員との対話を通じた気づきをもとに課題を解決することにより、社員一人ひとりが心身ともに健康で、未来志向で働くことのできる組織、人となり、結果的にお客さまにソリューションを提供できると考えています。

白石 現在、本社の食堂をリニューアルしている最中ですが、栄養バランスの取れた昼食はもちろん、一日中、社員が気軽に集い、活気にあふれ、所属を超えた人的交流を活性化できることをコンセプトに工夫を凝らしています。これらは社員からの要望を元に、各職場からのプロジェクトメンバーと経営が議論を重ねて作り上げたものです。そこから新たなイノベーションが生まれてくることを期待しています。

田澤 今までの健康経営のあり方は、どちらかと言えば、会社が施策を考え、社員がそれについていく、という形でした。しかし、自分がこの会社でどういう仕事をしてどういう成果を出すか、ということと同じく、「自分の健康をどうマネジメントするか」ということも、自身の人生においてとても大切なことです。そのような意味で、これからは社員が主体的な健康づくりを行う上で、会社に対して求めるサポートについて意見を発し、会社がその意見に応えていく、という形を増やしていくことが必要だと思います。
健康経営を通じてそのような社員と会社との関係が築かれていくと、それが事業活動にも好影響を与え、主体的に会社に提言を行っていくソリューションクリエーターが増えていくことにもつながるのではないでしょうか。

健康経営の目指す姿

人財戦略と一体となって推進する健康経営の目指す姿についてお聞かせください。

廣江 冒頭でもお話しした通り、健康は全ての基本です。「社員の心身の健康」という基本が、事業成長・業績にもつながります。SCREEN Value(企業価値)を高めるためにも、私たちはより高次元で、健康経営の実現を目指さなければなりません。10年後にはソリューションクリエーターに、そしてその次の新たなステージへ。仕事、職場、施設など、さまざまな方向から、健康でいきいきと働き続けられるような持続可能な環境づくりを実現していきます。

ダイアログにご参加いただいた有識者

株式会社WILLEE 代表取締役
田澤 直幹(たざわ なおき)氏

健康経営コンサルティングを提供する株式会社WILLEE代表。体系化されたノウハウを基に、健康経営の戦略立案から、推進体制運営、施策推進、効果検証、認定取得、社外PRまでを一気通貫で伴走サポートし、人的資本経営に取り組む企業の価値向上に貢献。