「Green Value Award」の取り組みから

(左)SCREENセミコンダクターソリューションズ ビジネス本部 TS製品統轄部 製品技術部 コア技術五課 沖田 展彬
(中央)SCREENホールディングス 取締役 総務・人事戦略担当 東京地区担当 安藤 公人
(右)SEBACS 安全・品質管理部  担当係長 菊地 徳倫

開催日 2018年5月24日
開催場所 SCREENホールディングス本社

SCREENグループでは、2012年からEHSの社内表彰制度として「Green Value Award」(以下、GVA)を設け、EHS活動に貢献した組織を表彰しています。今回は、2018年3月期「EHS管理統括者賞」を受賞した2つの取り組みを通して、お客さまとの共通価値を創造し、どのようにすれば社会全体の課題解決ができる企業になれるのかを議論しました。
※環境(E)・健康(H)・安全(S)

・半導体洗浄装置「排気レス・スピンスクラバー『SS-3100』」
 www.screen.co.jp/spe/products/ss-3100/
・耐薬エプロン「セバプロン」  
 www.sebacs.co.jp/products/sebapron

GVA 評価基準
事業活動や製品・サービスに対して、EHSの側面から、先進性、独自性、応用性、困難度/努力度/継続性、経済効果、ブランド・ユーザーからの評価の6つの評価軸で審査。

業界全体に貢献する取り組み

SCREENセミコンダクターソリューションズ TS製品統轄部 製品技術部 コア技術五課 沖田 展彬

安藤 GVAは、EHS活動の推進と周知浸透を目的に2012年から始まり、エントリーされている取り組みのレベルも年々上がってきていると感じています。今回、EHS管理統括者賞を受賞された2つのテーマは業界全体に貢献できた点を高く評価しています。どのようなきっかけから、今回の課題に行き着き、解決策を具現化したのですか。

沖田 「排気レス・スピンスクラバーの開発」は、お客さまから「排気を削減できないか」というお話をいただいたことがきっかけです。
排気を削減するとなると、今まで排気が果たしていた役割をどのように補うかという問題が出てきます。そこで装置内で排気を浄化して循環させる、すなわち、排気を再利用できないか、という発想が生まれました。実際に試してみるとうまくいくことが分かり、肉付けをしていき、今回の開発に至りました。 

SEBACS 安全・品質管理部  担当係長 菊地 徳倫

菊地 受賞した「安全ツールの展開」のきっかけは、10年ほど前、現場の作業でお客さまから借用した防護エプロンを着けた作業中に薬液が体に付着し、作業安全に懸念を生じた事象があったことです。社内で「自分たちの身を守る自分たちのツールが必要」という声が上がり、防護エプロンを探し始めました。ところが市販品は体が全て隠れるもので、重くて、汗をかきやすく、作業がしづらいものしかありません。そこで、自分たちの身を守るものは自分たちで作ろうと方針転換をしました。
 

安藤 自分たちにとって使いやすいよう工夫をするのに、どのようなアプローチで開発を進めたのですか?

菊地 SEBACSの安全部が開発部と共同で進めました。日頃の安全衛生委員会活動やヒヤリハット改善提案などからヒントをもらい、試行錯誤しながら軽量化や作業性をアップし、長時間作業時も負荷が少ない耐薬エプロン「セバプロン」が生まれました。

安藤 ヒヤリハット改善提案からの製品化だったのですね。今、セバプロンはいろいろなお客さまに評価される商品に育ち、安全面で業界全体に貢献しています。

EHS活動の取り組みで得たもの

安藤 排気レス・スピンスクラバーも製品化につながると同時に、環境への配慮が必要な今後のビジネスに結びつく開発となりました。この取り組みで得たものはありますか。

沖田 入社3年目にこの案件に関わりましたが、主幹として開発するのは初めてで、排気レスを本当に実現できるのか懸念しました。学ぶことは多かったですが、中でも排気は捨てるものという「固定概念をなくすことの重要性」を実感しました。他にも、発想の転換で開発できないかと考えられるようになりました。

安藤 排気レス・スピンスクラバーは優れた技術開発を表彰する「フロンティアゲート」(1986年より実施している社内の技術発表会)でも受賞しています。着想も良く、技術的にも優れた開発だったということですね。
SEBACSは、熊本大震災でのBCP活動で2016年度のGVAも受賞しました。2年連続の受賞となる今回は、安全ツールの開発というまた違った側面での評価となりましたが、受賞により得たものはありますか。

菊地 私は安全品質管理部で作業者とお客さまのEHSに関わる業務を担当していますが、今年はどのような特徴あるEHS活動を展開しようか、どのような安全グッズを作ろうかなど、会社全体で、EHS活動への励みやモチベーションになっています。
 

社会的課題を解決する共通価値の創造

SCREENホールディングス 取締役 総務・人事戦略担当 東京地区担当 安藤 公人

安藤 SCREENグループで取り組んでいるSDGsの観点で見ると、排気レス・スピンスクラバーはSDGsの「資源利用効率の向上とクリーン技術および環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を 向上させる」ことにダイレクトにつながります。セバプロンの取り組みは、「全ての労働者の権利を保護し、安全、安心な労働環境 を促進する」という目標にマッチします。環境・社会的課題に対して貢献できる製品を、事業を通じて提供 できていると喜ばしく感じています。

沖田 現状はまだ装置単体での導入ですが、お客さまが新工場を建てられる際 に全てを排気レス装置に替えれば、工場全体の排気設備、空調コスト、CO2削減に大きくつながることを期待していただいています。また、お客さまからベストサプライヤー賞をいただくなど、高い評価を得ていると感じています。

菊地 セパブロンは開発してから10年、継続して活動を続けているツールです。初期に開発したものから、お客さまの意見やヒヤリハット改善提案、従業員の意見を取り入れ、通気性をアップするなど改良を続けてきました。現在もお客さまから「こんな製品が欲しい」とのご要望があり、まだまだ進化させられると思っています。

安藤 従来のビジネスはお客さまの品質向上やコスト削減に集中していれば良かったかもしれませんが、これからは社会全体の中で、どのような課題を解決するかという視点が大事です。社会全体には、私たちとお客さまとの共通の価値があります。お客さまと一緒に価値を創っていくことが、共通価値の創造です。そこ に注力することがSDGsやCSR活動につながります。今後も、表彰制度をはじめとしたさまざまな活動を通じて、より持続可能な開発型企業を目指していきたいと思います。
 

代表取締役
専務取締役 CSR経営担当
南島 新

GVAでは、当初、省エネなどの環境負荷低減活動でのエントリーがほとんどでしたが、「水銀ランプを使用しない直接描画装置『Ledia5』の開発」など、ここ数年、環境や安全に配慮した製品やサービスでのエントリーも増加しています。今回表彰された2つのテーマにつきましても、製品を通してお客さまが抱える社会問題に一つの答えを提示できている点を高く評価しました。
当社は開発型企業としてモノづくりを進めるなかで、お客さまや地域社会、従業員などのステークホルダーが抱える様々な環境・社会的課題の解決に取り組んできました。今後もさらにこの取り組みを深めてまいります。
 

※文中の肩書きは取材当時のものです。