リスクマネジメント
「CSR 憲章・行動規範」における「健全で効果的な企業統治」のもと「リスクマネジメント方針」を策定し、ビジネスリスクの洗い出しとその軽減に向けた取り組みを行うとともに、持株会社(HD)がグループ全体のリスクマネジメント状況を把握する仕組みを用いてリスクマネジメントを運用しています。
リスクマネジメント推進体制
当社グループの企業価値にマイナスの影響を及ぼす恐れのあるリスクを軽減するため、HD代表取締役 取締役社長を最高責任者とし、各グループ会社の社長等を各社のリスクマネジメント責任者とする全社横断的なリスクマネジメント体制を確立しています。
その中核に「グループリスク委員会」をおき、リスクマネジメントの運営および方針を策定し、企業価値毀損の未然防止• 最小化の視点から、グループ全体に内在するリスクとその状態を把握しています。また、年度ごとの経営環境の変化に応じたグループ重要リスクの設定により、リスク管理の方向性を定め、顕在化の予防に取り組んでいます。
なお、グループ重要リスクは、グループリスクリストをもとに、委員会での協議により重要と考えられるリスクを当期のグループ重要リスクとして選定し、HDの取締役会の決議を得て決定しています。さらに、3つのディフェンスライン※1の考え方で、個々のリスク管理の担当と役割を定め、現場と経営層がリスク情報を共有するガバナンス体制を構築しています。
※1 第1ディフェンスライン:事業会社系グループ会社など、第2ディフェンスライン:HD管理系部門・機能会社、第3ディフェンスライン:HD内部監査部門
● リスクマネジメント体制・役割
リスクマネジメントのさらなる実効性強化に向けて
前期に引き続き、2025年3月期においても、第1ディフェンスラインの4つの事業会社と担当第2ディフェンスラインとの間で面談を実施し、グループ重要リスクの項目を中心に、第2ディフェンスラインがレビューし、リスク低減活動をサポートする運用を実施しました。グループ全社で同じ基準で評価を実施することを目的として、2024年3月期から導入したリスク評価のクライテリアを使用した評価の考え方に基づき、第1ディフェンスラインのリスク評価値の妥当性だけでなく、具体的な対応策の妥当性やサポート内容も議論するなど、運用を深化させています。
●グループリスクマネジメントの運用フロー
●グループ重要リスク(2026年3月期)
リスクカテゴリー | グループ重要リスク 概要 | 対応策(例) |
1. 内部統制・ |
●不正、不適切な行為の発生 (内部統制の不備、コンプライアンス意識の欠如/低下など) |
●業務フローの再点検とチェック機能の強化 ●コンプライアンス教育の徹底 |
2. 経営計画、収益性 |
●顧客の設備投資状況の急激な変化 | ●顧客の設備投資計画状況のモニタリング ●毎月の損益予測により、必要に応じて利益改善策の立案・実施 |
3. SCM |
●SCMもしくは生産に起因した在庫増 (調達部材、保守パーツ、仕掛品、製品在庫などの余剰) |
●在庫管理委員会によるモニタリング ●モノづくり改革による製造LTの短縮、滞留在庫の削減など |
4. 技術・製品 |
●市場シェアの低下 (新技術/新製品の開発遅延、営業力の低下) |
●顧客ニーズを正確に理解した製品開発戦略の立案 ●開発ロードマップに基づく製品の開発およびリリース |
5. 安全な職場環境 |
●労災事故の発生 | ●労災の芽をあらかじめ摘み取る取り組みの強化 |
6. 情報システム、 |
●情報セキュリティの各種トラブル ●サプライヤーへのサイバー攻撃 |
●EDR(Endpoint Detection and Response)による端末操作、サーバー処理の常時監視 ●秘密度ラベル導入による顧客情報の暗号化 ●主要サプライヤーへのセキュリティ対応状況の調査 |
7. 次世代育成 | ●エンゲージメントの低迷 | ●エンゲージメントサーベイの結果の分析、対策の実施 ●企業理念、存在意義、CSVのさらなる浸透 |
8. 次世代育成 | ●後継者育成の遅延 | ●タレントレビューによる次世代経営人財の計画的な育成 ●社内教育プログラムによる次世代経営者育成施策の実施 |
9. 環境規制の強化 | ●環境負荷低減の対応の遅れ (事業活動/製品によるGHG排出量) |
●Scope3に適合する認定制度(スーパーグリーンプロダクツ)の運用 ●売上に占めるスーパーグリーンプロダクツ比率の計画的な拡大 |
BCP(事業継続計画)
当社グループでは、自然災害や感染症によるパンデミックの発生といった緊急事態に備え、従業員およびその家族の安全を最優先とした災害対策を実施しています。大規模災害が発生した場合でも、製品やサービスの供給責任を果たし続けるため、事業継続マネジメントシステムの国際規格である「ISO 22301」の認証を取得し、早期復旧が可能な、実効性の高いBCP体制を構築しています。
緊急体制の整備
災害発生時に迅速に従業員の安否を確認できる「安否確認サポートシステム」と、災害の被害状況を正確かつ迅速に確認・共有できる「災害掲示板システム」を採用しており、これらのシステムを実際に使用した訓練や、大規模災害を想定した総合演習を計画的・継続的に実施しています。また、2024年3月期までに国内・海外の全てのグループ会社でBCP策定を完了させ、2025年3月期には海外も含めた災害対応演習を実施しました。さらに国内では、サプライヤーとのBCP連携の強化や、工場火災を想定した避難訓練の実施など、当社グループ全体の事業継続対応力の拡充と底上げを行いました。
製造基盤の強化
国内事業所では、耐震診断、建屋の補強や老朽建物の撤去、設備の固定、耐震対応機器の導入などを進めています。大規模災害によるサプライチェーンの供給障害などの事例から、国内・海外の生産拠点、部品の調達先を補完できる生産体制を確立し、事業が大きなダメージを受けないためのシステム構築を推進しています。半導体製造装置を製造している滋賀県の彦根事業所では、生産工場の震災対策を図り、水害対策として止水壁設置を完了しています。その他の事業所でも水害対策を計画的に進めるなど、各拠点の特性に応じた対応を推進中です。
安定的な部品調達
サプライヤーの被災状況を確認できるシステムの導入や、主要部品の代替、調達先の多様化、ロジスティクスの複線化など、調達面でのBCP強化にも取り組んでいます。また、被災時の顧客へのフィールドサービス体制の強化、サプライヤー各社に対するBCP体制構築状況の調査実施など、バリューチェーン全体でのBCPを展開しています。
情報セキュリティ対策の強化
サイバー攻撃などの情報セキュリティリスクを重要な経営課題の一つとして位置付け、HD・経営戦略担当役員を最高責任者として、グループ全体の中長期の方針(ITロードマップ)や規定の策定・施行など、情報セキュリティの強化を継続的に実施しています。
サイバー攻撃の手法や情報セキュリティリスクは、日々変化しています。これらの変化に迅速に対応できるよう、パソコンやサーバーなどの不審な挙動を24時間365日監視・対応できる体制を、グローバルに運用しています。また、事案発生に備えたインシデント訓練など、情報セキュリティを社会的責任と捉え、事業を円滑に継続できるよう対策を推進しています。
さらに、情報セキュリティに関連する規定やガイドラインを定期的に見直し、全ての役員、従業員、派遣社員などを対象に、最新情報に基づいた情報セキュリティ教育を毎年実施するなど、意識の向上にも努めています。
SCREENグループでは、情報セキュリティを強化するためにリスクマネジメント組織を設け、業務委託先を含むサプライチェーンのリスク管理を視野に入れ、情報セキュリティ関連の各国法令や業界団体のセキュリティ標準規格に準拠したセキュリティレベルに向上させるよう、取り組んでいます。