Doc. No.: HD210714

株式会社SCREENホールディングスはこのほど、臓器灌流※2(かんりゅう)システムの実用化に向けた研究開発の一環として、慶應義塾大学医学部(以下、慶應大学)との共同研究で、劣化した臓器を生体外灌流することにより、短時間での機能蘇生に成功しました。

臓器灌流システム

近年、深刻な移植用臓器不足を解消するため、心停止や脳死状態のドナー臓器を機械灌流して機能蘇生させることで、移植可能な臓器として活用する試みが欧米諸国で始まっています。しかし、移植時の阻血※3などが原因で機能が劣化した臓器を機械灌流する際に、どの程度の時間で機能蘇生するのか解明されていませんでした。

当社は、2015年4月に国立研究開発法人理化学研究所 器官誘導研究チーム(以下、理研)および株式会社オーガンテクノロジーズと臓器の長期保存および機能蘇生を可能にする臓器灌流システムの装置化に関する共同研究契約を締結。2016年からは理研の「産業界との融合的連携研究制度」のもと次世代臓器保存・蘇生システム開発チームを設置し、基本システムの構築に成功しました。2018年9月からは装置開発と並行して、本システムの実用化を目的に慶應大学との共同研究を開始しています。

このたび、本システムを用いて、長時間にわたり血流が循環停止し機能が劣化したブタ肝臓を機械灌流し、蘇生時の代謝能をメタボローム比較解析することで、3時間以内に機能蘇生することを示しました。また、機械灌流時に血液そのものを用いて灌流させることで、肝臓代謝能が生体内に移植をしたときと同程度まで機能蘇生することがわかりました。本成果は移植専門誌の「Transplantation Direct (Vol. 7, No. 7, July 2021) 」に掲載されています。

当社は、今後も本領域のトップのアカデミアとの共同開発を通じて、臓器灌流システムの早期実用化を目指すとともに、移植医療、ならびに再生医療分野への研究開発および事業展開を通じて同分野の発展に貢献していきます。

■慶應義塾大学医学部 内科学(循環器) 小林 英司 客員教授※4のコメント
長時間虚血に陥った移植用臓器を体外で蘇生させるという夢の技術は、世界中の移植に関わる者が実用化を待ち望んでいます。その基本となる機器を短期間で開発した株式会社SCREENホールディングスに敬意を表するとともに、世界中で使用される機器として実用化されることを期待しています。

■論文

タイトル: Rapid Metabolic Recovery of Donor Circulatory Death Liver Graft Using Whole Blood Perfusion: A Pig Study
著者名: Yoshimoto S, Ohara M, Torai S, Kasamatsu H, Ishikawa J, Kimura T, Nadahara S, Kobayashi E.
掲載誌: Transplantation Direct
DOI: 10.1097/TXD.0000000000001170

 

※1 メタボローム: 生物の細胞や組織内に存在するタンパク質や酵素が作り出す代謝物質の総称。その代謝系全体や代謝物の解析
※2 灌流: 体内または臓器・組織・細胞に薬液などが入った液体を流し込むこと
※3 阻血: 心停止や血管の閉塞(へいそく)によって臓器に血液が送られなくなった状態
※4 研究当時: 臓器再生医学寄附講座 特任教授

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