Doc. No.: NR151216

株式会社SCREENホールディングス(以下、SCREEN HD)、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理化学研究所)および株式会社オーガンテクノロジーズ(以下、オーガンテクノロジーズ)はこのほど、移植治療を目的とした臓器の長期保存および機能蘇生を可能にする、次世代臓器灌流培養システムの装置化に関する共同研究を本格始動しました。

次世代臓器灌流培養システム
ブタ肝臓移植実験の様子

臓器移植治療は、機能不全に陥った臓器の抜本的な治療方法として期待されています。しかし、国内における臓器移植の実施数は臓器移植を希望している患者数に対して15%程度に留まっており、ドナー臓器不足は深刻な問題となっています。その理由として、現在、主流となっている摘出臓器を保存液に冷温で浸漬して保存する単純冷却方法では、摘出した臓器の保存時間が短いことが挙げられます。一方、世界的にもドナー臓器不足の解消に向けて、心停止ドナーの臓器の利用拡大に向けた取り組みが求められています。

このような動向を受け、理化学研究所とオーガンテクノロジーズを中心とした研究グループは、2015年4月に、血管を介して培養液を低体温域で灌流(かんりゅう)させる次世代臓器灌流培養システムを開発。このシステムでは、ラットから摘出した肝臓において、単純冷却方式の約2倍となる24時間の臓器保存を実現しました。さらに、長時間の阻血※1状態により機能不全となった肝臓の蘇生を可能とし、移植動物の生存を可能としました。この技術は、臓器移植医療の増加および成功率の向上に繋がる革新的な技術として、今後の実用化が期待されています。

この度、SCREEN HD、理化学研究所、オーガンテクノロジーズの3社は、この技術の装置化に関する共同研究契約を2015年4月に締結。理化学研究所(神戸市)に産業連携のために初めて設置された「融合連携イノベーション推進棟(IIB)※2」内に研究拠点を設置し、共同研究を本格始動しました。今後、SCREEN HDが半導体洗浄装置で培った液体制御技術や装置化に関するノウハウと、理化学研究所およびオーガン テクノロジーズの臓器培養に関する技術を融合してブタでの前臨床研究を実施し、3年後を目処に次世代臓器灌流培養システムの装置化を完成させ、臨床試験の実施を目指します。

SCREEN HD、理化学研究所およびオーガンテクノロジーズは、今回の共同開発を通じて、次世代臓器灌流培養システムの早期実用化を目指すと共に、移植医療、並びに再生医療分野への研究開発および事業展開を通じて同分野の発展に貢献していきます。

■ 株式会社SCREENホールディングス
   常務取締役 最高技術責任者(CTO) 灘原 壮一のコメント

当社は、印刷関連機器にはじまり、半導体製造装置、液晶パネル製造装置など、電子機器分野に事業展開してまいりました。この度、新規事業領域であるライフサイエンス分野への事業展開を進める中で、国立研究開発法人理化学研究所と株式会社オーガンテクノロジーズが開発した臓器保存と心停止ドナー臓器の蘇生に関する技術と、当社の液体制御技術やクリーン装置化技術を融合し、臓器保存時間の延長と臓器蘇生のための灌流培養システムの開発を本格始動しました。「融合連携イノベーション推進棟(IIB)」を新たなイノベーション研究拠点として、移植医療並びに再生医療分野への研究開発および事業展開を通じて、同分野の発展に貢献したいと考えています。
 
■ 国立研究開発法人理化学研究所 多細胞システム形成研究センター 器官誘導研究チーム
   チームリーダー 辻 孝のコメント

私たちは、株式会社オーガンテクノロジーズと共同で、移植医療におけるドナー臓器不足の解消に向けて、臓器保存と心停止ドナー臓器の蘇生に関する技術を確立いたしました。今回の株式会社SCREENホールディングスとの共同開発において、ヒトへの臨床応用化に向けて、ヒト臓器の保存時間の延長と臓器蘇生のための灌流培養システムの開発を進め、ブタでの前臨床によりその有効性の実証を進めてまいります。今回の共同開発は、ヒトでの実用化に向けた研究開発を加速することが期待され、臓器移植を待つ患者さまに対する移植医療の発展に貢献したいと考えています。
 
■ 株式会社オーガンテクノロジーズ
   代表取締役社長 杉村 泰宏のコメント

私たち株式会社オーガンテクノロジーズは、国立研究開発法人理化学研究所と共に、摘出臓器の長期保存・機能蘇生に関する研究を行ってまいりました。この度、次世代臓器灌流培養システムの装置化という実用化に向けた共同研究開発を株式会社SCREENホールディングスと進めていく運びとなり、誠に喜ばしく思っております。私たちが有する知財の提供と、装置化に必要不可欠な培養液などの開発をすることにより、共同研究グループの研究の進展に貢献してまいります。今回の共同研究の開始により、お互いがもつ技術を融合し、移植・再生医療分野での実用化を加速することによって、多くの患者さまが臓器移植を受けることができないという現状の課題を早期に、かつ安全に解決したいと考えています。
 
※1阻血
心停止や血管の閉塞(へいそく)によって臓器に血液が送られなくなった状態。阻血に陥っても体温は急激に下がらないため、臓器の周囲温度が体温程度に維持されている状態を温阻血といい、臓器障害が急速に進行する。

※2神戸・融合イノベーション推進棟(IIB)
IIBはこれまでの理化学研究所の産業連携の制度に加えて、企業の皆さまとの共同研究専用の場を設置し、理化学研究所のもつ様々なシーズの実用化を目指した新しい試みとして、日本最大級のバイオメディカルクラスターである、神戸医療産業都市に開設しました。

本件についてのお問い合わせ先

株式会社SCREENホールディングス 広報・IR室
Tel: 075-414-7131 Fax: 075-431-6500
 
国立研究開発法人理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 048-467-9272 Fax: 048-462-4715

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