今の浜松町駅の近くに縄武館という半民半官の砲術訓練所がありましたが,最初に和文鋳造活字を実用化したのは,そこの教官であった大鳥圭介,この人が安政6(1860)年に初めて漢字と仮名の鋳造活字による組版で本を出しています。『築城典刑』という有名な本ですが,その初版と再版が活版本です。陸軍所という幕府直轄の訓練所が出来ますけれども,縄武館に続いて大鳥圭介がその教官になります。そこで陸軍所版といわれる飜訳兵書をどんどん出していく。縄武館版と陸軍所版を併せて,幕末に至るまで約十数点二十数冊,最終的にはこれが何冊発行されたのか分からないという標目もありますが,それぐらい出ています。その内縄武館版が3点です。その殆どは,漢字片仮名交じりですが,陸軍所版で唯一漢字平仮名交じりのものがあります。それが次の図版,『歩兵制律』[★図43]という本です。今,印刷博物館に常設展示してあります。
   
★図43
『歩兵制律』……内題「内務制度歩兵守戒軍律』,版心「歩兵製律」。陸軍所,元治2(1865)年。中本。
 
     
     
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