次の図版がオリジナルのオランダ版「レースブック」[★図38]です。こういう風にオランダ語のオリジナルが残っていて比べられる場合はいいんですが,そうでない場合――開成所が持っていた様々な洋学書類が国会図書館に入っているんですけれども――,一体どれとどれがオランダ版で,どれが江戸で刷ったものなのか,細かく調べないと分からないわけです。
 次の図版は通称「ケンニス」,Handleiding tot de kennis der natuur. [★図39]という本です。この本の活字を高野彰さんがお調べになられて,蕃書調所版と同じ活字が使われている,ということから,恐らく安政4(1858)年刊行の蕃書調所版と推定されました。出島版は非常に綺麗だったんですけれども,数点を残して消えてしまい,幕末まではもちません。それに対して江戸で出されていく官版系列の飜刻洋書というのはずっと出されていくし,点数も確定できないぐらいあるわけです。開成所版の流れは明治維新を越えて,明治初年の大学南校版や沼津版などの飜刻洋書にまでつながっていきます。
   
★図38
オランダ版 Leesboak voor de scholen van het nederlandsche leger.
 
     
 
★図39
蕃書調所版 Handleiding tot de kennis der natuur.
 
     
    page1234567891011121314151617181920212223242526