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2008年04月21日 | なぜDeviceN形式を使用するのか?

DeviceNに関する技術情報をまとめます。
以前の記事
QuarkXPress6以降は「DeviceN」で出力
InDesignにおける「DeviceN」は「色分解(In-RIP)」
DeviceNを理解する
オーバープリントを正しく理解する(2) - DeviceNの影響
などの内容とも関係して、よく質問されるDeviceNの必要性について説明します。

■DTPアプリケーションで分版処理PreSepa.png
今となっては少数の環境でしか使われていませんが、DTPの初期の頃は右図の様にRIPの内部で分版するのではなく、DTPアプリケーションによって分版出力するのが一般的でした。これを「プリセパレーション」という人もいます。Trueflowでの「プリセパレーション運用」はメリットもなく推奨しません。
現在のDTPアプリケーションでも対応しており、InDesignでは(In-RIP)ではなく「色分解(InDesign)」でありQuarkXPressでは「色分解」という指定になります。
この場合、DTPアプリケーションから出力されるPostScriptは、C,M,Y,K(+特色版)の各々が、すでに分版処理された状態で記述されており、RIPとしては(CMYKデータなら)モノクロ4ページとして出力されます。
この様な処理の場合、出力されるPostScriptにはDeviceNの記述もオーバープリントの記述も必要ありませんでした。
例えば「墨ノセ」を表現する場合は、K版では文字を描画して、他の版ではその文字を「なかった事にして」描画をすれば、出力結果としては「墨ノセ」となります。ケヌキの場合は、他の版でもその文字を描画する事で、そこが白く抜けます。本来DeviceNが必要な、特色とプロセス版を混ぜた色も、特色版とプロセス版のそれぞれに、同じオブジェクトを記述するだけで表現できました。
これらの分版処理をDTPアプリケーションの内部で行う場合は、RIP側では「重なったオブジェクトをどう処理するか」という事を考える必要はありませんでした。
言い換えると、オーバープリントやDeviceNの記述とは「重なったオブジェクトをどう分版するか」という分版処理の方法を定義したものの一種であり、この様に既に分版されたデータでは、RIP側でもともと推奨ではありませんがオーバープリントの無視や特色の疑似色化などの処理を行う事もできません。

※AD-810MXはIn-RIPセパレーションもサポートしています。

■In-RIPセパレーションに必要なDeviceNIn-RIPsepa.png
一般的には全ての版を一度に演算する方が、高速に処理できるというメリットもあり、PDFワークフローや、分版処理をサポートしたRIPに出力するPostScript運用では、全ての色を一つのデータで表現する必要が出てきました。
この事により、特色やオーバープリントの情報も正確にデータ上に表現する事が重要になってきましたが、DeviceCMYKでは特色を表現できません。Separation色空間を用いても、単色の特色しか表現できません。
DeviceNを使用する事で、全ての版の出力を考慮した「RIP分版が前提のデータ」を作成する事が可能になります。
DeviceN形式を必要とする「混合インキスウオッチ」を始めとするいくつかの機能の使用頻度は低いかも知れませんが、本当にそれらの機能を使っていないか、事前にデータ上でチェックする事は簡単ではありません。アプリケーションの持っている全ての機能をIn-RIPセパレーション運用で完全に出力するためには、DeviceN形式による記述が必須です。
以前の記事「オーバープリントプレビューを活用」では、DeviceN運用色分解(In-RIP)で出力する事を、Adobeの推奨である事を理由としていましたが、この様に技術的な裏付けもあるのです。

■コンポジットCMYKでIn-RIPセパレーション
しかし、In-RIPセパレーションをコンポジットCMYK出力で行われるケースが多い事も事実です。
確かに、出力側としてPostScript Level2は、DeviceNをサポートしていません。またDTPアプリケーションとしてもQuarkXPress3.3/4.1ではDeviceNをサポートしていません。
この様な条件下では、プリセパレーション運用を行うのがQuarkXPress3.3/4.1の本来の仕様ですが、そうも言ってられないのでIn-RIPセパレーションを行う場合、コンポジットCMYKで出力するしか方法がありませんでした。しかし以前の記事にある様に、コンポジットCMYK出力ではQuarkXPressの場合InDesignの場合も制限があり、RIP内部で種々の工夫をしていくつかの制限Quarkの特色グラデーションなどは克服していましたが、全てが完全に出力できるわけではありません。
DeviceN出力はRIPとDTPアプリケーションの両方でサポートして始めて使えるものなので、進歩の過程では、この様な運用もあると思いますが、あくまでも過渡期の運用であると考えるべきです。
現在は、RIPもDTPアプリケーションもDeviceNをサポートしています。また必要に応じて適切にDeviceNが使われるPDFワークフローもあります。

道具の進化に伴って、運用も最適なものに変えていく事が重要です。
PostScript運用においては「色分解(In-RIP)」や「DeviceN」の出力を選択を推奨します。
PDF運用なら最初からIn-RIPセパレーション運用が前提で、DeviceNも自動的に使用されます。

・TrueflowではQuarkXPress 6のPDFダイレクト出力をサポートしていません。QuarkXPress 7(英語版)以降でサポートしています。
・InDesignやQuarkXPressのヘルプには「コンポジットCMYK」は特色の出力ができないカラープリンタ出力用である事が明記されています。
・問題になるのは、本当は「特色インキ」を使うつもりではないのに、間違って特色指定されているデータです。
・DeviceN形式はPostScript 3、およびPDF1.3形式以降でサポートされています。
・Separation色空間はPostScript Level2以降、およびPDF1.2形式以降でサポートされています。

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