以前の記事「QuarkXPress6以降は「DeviceN」で出力」や「InDesignにおける「DeviceN」は「色分解(In-RIP)」」で、DeviceNで出力という説明をしています。
DeviceNとは、PostScriptやPDFにおけるデバイス色空間の一つで、PostScript 3およびPDF1.3以降からサポートされています。
P41にはDeviceNの定義として「4色を超える多色カラーや(DuoToneを含む)マルチトーンカラーが指定できる」とありますが、もう少し具体的に解説します。
■DeviceCMYKとの比較
他のデバイス色空間として代表的なDeviceCMYKとの違いを理解する事でDeviceNの特徴が見えてきます。
DeviceCMYKでは、必ず4色の色値を指定する必要があります。墨ベタの場合も簡単に表現すると「CMYK=0,0,0,100」という指定になります。つまり明示的に使わない色も「0%」と指定する必要があります。
DeviceNで墨ベタを表現する場合はこれが「(特色)Black=100」という指定になり、予約語である「(特色)Black」はプロセスカラーのBlackと解釈されます。他の色の指定は必要ありません。概念的には、この場合CMYという色は「なし」となり、DeviceCMYKの場合の「0%」との概念の違いが、ほかの処理(オーバープリント - 詳しくは後日別の記事で)で重要になってきます。
■特色の表現とDeviceN
DeviceNの特徴としては特色の表現が自在である事も挙げられます。
もちろんDeviceCMYKでは特色を表現する事はできません。
特色「S1」をDeviceNで簡単に表現すると「(特色)S1=100」となります。
DeviceNでは、この様にプロセスカラーも特色も同じように表現し、色の名前が予約語かどうかで、それが特色かプロセスカラーかが決まります。
別の例として、金赤をDeviceCMYKで表現すると「CMYK=0,100,100,0」となりますが、DeviceNの場合は「(特色)Magenta,(特色)Yellow=100,100」となります。
DeviceNでは、それ以外にも「(特色)S1,(特色)Yellow=100,100」の様な、特色とプロセスカラーの掛け合わせや、複数の特色の掛け合わせ、4色を超える色の掛け合わせも自由自在です。別の色空間である、Separation色空間を使う事で特色を表現できますが、単色の特色しか表現できません。
これが、QuarkXPressでは「Multi-Ink」であり、InDesignCS以降では「混合インキスウォッチ」に相当します。
上図のDeviceNの色を「混合インキスウォッチ」で設定したダイアログを以下に示します。通常のカラースウォッチのダイアログと比較すると、DeviceNでは必要な色にのみ色値を設定し、使わない色は「0%」ではなく「なし」で定義される事がよく分かります。
■定義可能な色数
DeviceNによる一つの色定義で使用可能な色数としては、PDF1.3では8色まで掛け合わせ可能で、PDF1.5で32色までに拡張されています。(プロセスカラー込みの数になります)
この色数はあくまでも「一つのオブジェクトの色指定で混ぜる色(インキ)の数」であり、ドキュメント全体で使用できる色数ではありません。