アンケートの自由記述欄を設けると、どうやって分析したら良いか困ってしまうことが多いでしょう。とはいえ、選択式のみで顧客の意見を吸い上げるのが難しいシーンがあるのも事実です。そこで当記事では、自由記述式アンケートの回答結果を分析する方法を7つ紹介します。
アンケートの自由記述欄には、数字では測れない利用者の本音や隠れたニーズが詰まっています。ところが、いざ集まった回答を読み込もうとすると「量が多くて整理できない」「どうやって分析すればいいのかわからない」と悩む人も多いのではないでしょうか。
本記事では、初心者でも取り組める分析の流れや工夫をやさしく解説し、実務に役立つポイントをまとめました。アンケートを分析するときは、ぜひ参考にしてみてください。
まず、アンケートの書き方を工夫することで回答する人が迷わず書けるようになり、分析もしやすくなります。具体的には、次のポイントに気をつけましょう。
自由記述の質問は、あいまいな表現だと回答者が「何を書けばいいの?」と迷ってしまいます。質問文はできるだけ具体的にし、「どんな内容を」「どのくらい詳しく」書いてほしいのかをはっきり示しましょう。
たとえば「商品の感想を教えてください」よりも「商品の味・見た目・価格について感じたことを教えてください」と書くほうが答えやすくなります。質の高い回答が集まれば分析もしやすくなるので、なるべく具体的に質問しましょう。
書き方のサンプルをあらかじめ提示すると、回答者は安心して書き始められます。「例:スタッフが笑顔で対応してくれて嬉しかった」や「例:もっと○○なメニューがあると嬉しいです」といった短い例文を併記しましょう。
ただし、回答を誘導しすぎないようあくまで書きやすくするための参考として示し、自由に回答する余地は残しておくのがポイントです。
アンケートを作る段階で、集まった回答をどう整理・分析するかを考えておくと、集計作業がスムーズになります。たとえば「良い点」と「改善点」に分ける、「サービス」「商品」「価格」などのカテゴリに分ける、といった基準を先に決めておきましょう。分析を見据えて書けば集計ルールがブレず、後から比較もしやすくなります。

アンケートを分析する前にするべき”下ごしらえ”もあります。
自由記述の回答を、まずExcelなどの表計算ソフトに入力して整理しましょう。具体的には、1行に1つの回答を入れ、列には「回答内容」「日付」「属性(性別・年代など)」を分けて記録します。空欄や同じ内容が重複している場合は削除、文章型の回答はそのままテキストとして残し、数値型はそのまま数字として入力してください。
この“下ごしらえ”がきちんとできていると後の集計や分析がスムーズになり、ミスを減らせます。
ここからは、自由記述式アンケートの回答結果を分析する方法を具体的に7つご紹介します。
「待ち時間15分」「利用回数は3回」など数値で書かれた自由記述を整えます。やるべきことは次の5つです。
外れ値(極端な値)は平均を大きく動かすので、別途メモしておきます。空欄や0は先に除外・区別しておくと集計ミスを防げます。
アフターコーディングは、文章で書かれた自由記述をグループ分けして数字に変える方法です。
まず10〜20件ほど回答を読んで「接客が良い」「料理が美味しい」「値段が高い」など、よく出る内容を探します。それぞれに番号や短いコード(例:A=接客、B=料理、C=価格)をつけると、より分析しやすくなります。全ての回答にコードを割り振ったら、Aが何件、Bが何件…と数を集計したら完了です。
こうすることで文章データでも“どの意見が多いか”を数字で比較でき、改善や強化の優先度が見えてきます。
テキストマイニングは、文章の中から「よく出る言葉」や「言葉同士の関係」を見つける方法です。たとえば、アンケートで「接客」「丁寧」「料理」「美味しい」がよく出るなら、そのお店は接客や料理に評価が集まっているとわかります。
ツールを使えば、出現回数を一覧表にしたり、ワードクラウド(よく出る単語ほど大きく表示される絵)を作ったりできます。ツールを使って分析するなら、初心者でも直感的に使える以下のツールがおすすめです。
属性別分析は「誰がどんなことを言っているか」を知るための方法です。アンケートでは性別・年代・職業などの属性を一緒に集めておくと便利です。「20代女性は接客を評価する声が多い」「50代男性は価格への不満が多い」など、グループごとの傾向が見えます。
Excelのクロス集計(ピボットテーブル)を使えば、縦に属性、横に意見カテゴリを並べて比較できます。改善策やターゲットごとのアプローチを的確に立てられるのがメリットです。
センチメント分析は、文章から「気持ち」を読み取る方法です。内容をポジティブ(良い印象)、ネガティブ(悪い印象)、ニュートラル(どちらでもない)に分類します。たとえば「接客が素晴らしい」はポジティブ、「料理が冷たかった」はネガティブです。
ツールやAIを使えば、大量の文章でも自動で判定可能です。「ポジティブ60%・ネガティブ30%・ニュートラル10%」と数字にすると、全体の傾向がひと目でわかります。
具体的には 、KH Coderなどのテキストマイニングツールを使った センチメント分析が あります。これは、事前に定めた ルールに基づいて感情を判定する方法です。この方法は分析結果に至る根拠 が明確なので、説明性や再現性に優れています。AIのようなブラックボックスではなく、「なぜその判断になったのか」が可視化されやすいため、ビジネスや学術分野での根拠重視の分析にも適しています。
顧客満足度やサービス改善の判断材料に使えるので、気になった方は次の記事を見ながら取り入れてみてください。
共起ネットワークは「同じ文章内で一緒に出てくる言葉」をつなげて図にする方法です。たとえるなら、言葉同士のつながりを可視化した路線図のようなものを作って、単語同士のつながりや意見の背景にあるテーマを直感的に把握します。一見バラバラに見える意見をまとめて分析する際に使われます。
共起ネットワークの作り方・使い方を詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
(内部リンク)共起ネットワーク 分析
トレンド分析は、自由記述の内容が時間とともにどう変化しているかを調べる方法です。たとえば毎月アンケートを取って記録することで「新メニュー導入後に“美味しい”という言葉が増えた」などの変化を確認できます。
やり方はシンプルです。回答を日付や月ごとに集計し、出現回数の変化をグラフ化します。折れ線グラフや棒グラフにすると、改善施策や季節要因の効果が一目で分かります。長期調査や定点観測にとても役立つ手法です。

自由記述は大きく「定性(文章)型」と「定量(数値)型」に分かれます。数値型は平均・中央値・頻度など統計的な方法で集計しやすいのが特徴です。文章型はアフターコーディングでカテゴリ分類したり、テキストマイニングで傾向を可視化できます。
型に合わない分析をすると結論がぼやけたり誤解を招く原因になりがちなので、自分のデータがどちらの型かを見極め、その特性に合った方法を選ぶようにしましょう。
アンケート結果を分析したいときに使えるツールを3つご紹介します。
自由記述の集計は専門ソフトがなくても、まずはExcelから始められます。回答を1行ごとに整理し、「回答内容」「日付」「属性(年代・性別など)」の列を作ると扱いやすくなります。
数値型の自由記述は、AVERAGE(平均)やMEDIAN(中央値)関数で全体の傾向をつかみ、COUNTIF関数で特定の値の件数を数えます。文章型の場合は、アフターコーディングで分類したカテゴリ別の件数を集計してください。ピボットテーブルを使えば、属性別の傾向も一目で確認できます。
集計結果は棒グラフや円グラフに変換して見やすい形でアウトプットすると、分析しやすくなるのでおすすめです。
近年はChatGPTなどの生成AIを使って、自由記述の分析を大幅に効率化するケースが増えています。具体的には、回答をAIに読み込ませて「似た内容ごとに分類(カテゴリ化)」してもらったり、多数の回答を短い文章に要約してもらうことが可能です。
「以下の文章を内容別に5つのカテゴリに分け、それぞれの特徴を50文字で説明してください」と指示すると、分類と解説を同時に出してくれます。もちろんAIの提案は合っているとは限らないため、最終的に人の目で確認・調整することが大切です。
生成AIを使うと、人間なら数時間かかる作業を短時間で終えられ、より分析や戦略立案に時間を使えるようになります。
自由記述の分析を効率的かつ深く行いたい場合は、専用の分析ツールを活用するのがおすすめです。
たとえば「NVivo」は、文章をカテゴリごとに整理(コーディング)し、属性との関係を細かく比較できるソフトです。研究や顧客インタビューの分析でも多く使われています。
日本語の文章解析に強い「KH Coder」は、統計的な手法を使って結果を分かりやすく可視化できるのが特徴です。たとえば単語の出現回数を数えて多い順に示したり、よく一緒に使われる単語同士をネットワーク図でつないだりと、多様な分析結果をグラフや図で直感的に確認できます。
どちらもCSVデータを読み込むだけで利用でき、分析の精度やスピードが格段に上がります。データ量が多い場合や、傾向を直感的に把握したいときに有効です。
分析したアンケート結果を人に伝えるときのコツをまとめました。
分析結果をわかりやすく伝えるには、「どんな情報を見せたいのか」に合わせてグラフの種類を選ぶことが重要です。
たとえば、割合を示すなら円グラフが適しています。数値や項目同士の比較には棒グラフです。時間の経過による変化を示す場合は、折れ線グラフが良いでしょう。自由記述の頻出単語を印象的に見せたいなら、文字サイズで頻度を表すワードクラウドを使うと、視覚的なインパクトが出ます。
重要な数値や割合は、文章や表の中に埋もれさせず、見た瞬間に目に入るように工夫しましょう。
たとえば「満足度90%」という結果は、太字や大きめのフォント、異なる背景色を使って目立たせると効果的です。グラフにデータラベルを追加して数値を直接表示すると、読み手がグラフと数字を見比べる手間がなくなります。
レポートやプレゼンでは、数字を視覚的に強調することで記憶に残りやすくなり、相手の印象に強く残ります。
アウトプットを作成する際は、まず結論から伝えることを心がけましょう。たとえば「最も多かった改善要望は『商品の価格』でした」と冒頭で示し、その後に理由や根拠を説明します。こうすることで相手は冒頭の時点で重要な情報を理解でき、詳細部分は必要に応じて確認できます。
ビジネスの現場では、すべてのページを丁寧に読む時間がない人も多いです。結論に至った背景やデータも簡潔に添えて納得感を持たせつつ、読みやすい資料に仕上げましょう。
結果を示すだけでなく、「どのようにしてその結果を得たのか」を明記すると、読み手に安心感が与えられます。
「500件の自由記述をアフターコーディングで分類し、年代別に集計しました」といった短い説明を加えるだけでも、データの信頼性は大きく向上します。分析方法を示すことで、別の場面で同じ手法を再現できるようになり、社内の共有や引き継ぎもスムーズに。
ただし詳細を長々と書き過ぎると読みづらくなるため、概要だけを簡潔にまとめるのがポイントです。
アウトプットの形や情報量は、見る相手によって変える必要があります。
社内の担当者向けなら、細かなデータや分析過程も含めて議論しやすい資料に。経営層やクライアント向けなら要点を絞り、見やすいスライドやインフォグラフィックを活用して短時間で理解できる形にします。外部向けに発表する場合は専門用語を避け、一般の人にも理解できる文章や図表を使うことが大切です。
自由記述式アンケートに関するよくある質問を並べるので、参考にしてみてください。
自由記述は回答者の負担が大きいため、何も書かずに終える人も少なくありません。これを減らすには、書き方例を示して心理的ハードルを下げる方法があります。
「例:スタッフが笑顔で対応してくれて嬉しかった」など短い例文を添えると、回答のイメージが湧きやすくなるでしょう。また、選択肢式の質問の後に「理由や補足があればご記入ください」と入れると、書いてもらえる確率が高まります。
多くの場合、自由記述の質問はアンケートの最後に置くのが効果的です。先に選択肢式の質問でテーマや思考を整理してもらうことで自由記述が書きやすくなるからです。ただし、自由記述で得たい内容が調査のメインテーマの場合は、回答者が疲れる前の前半に配置するほうが良いこともあります。
自由記述の数が多すぎると回答者の負担が大きくなり、途中で回答を止めるリスクが高まります。集計や分析にかかる時間やコストも増えます。本当に必要な設問に絞り、他は選択肢式や評価式にしておきましょう。
今回は自由記述形式のアンケートを効率的に分析する方法を丁寧に解説しました。アンケートの自由記述は、回答者の本音や気づきを引き出せる一方で、分析しにくいと感じるものです。
自由記述式のアンケートを手軽に分析したいなら、以下のツールがおすすめです。分析プロセスが示されるため、誰が行っても同じ結論にたどり着ける再現性の高さが魅力です。気になる方は、次のページに飛んでみてください。