画像解析AIとは?仕組みや活用方法を紹介

画像解析AIは、画像や動画から自動で情報を抽出し、ビジネスの効率化・技術発展を可能にする強力なツールです。製造業における不良品検知、医療における画像診断支援、マーケティングにおける顧客分析など、様々な分野で活用が広がっています。本記事では、画像解析AIの基礎知識から具体的な活用事例、そして導入を検討する際に見るべきポイントまでを解説します。最後に、おすすめの画像解析AIサービスもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

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画像解析AIとは

画像解析AIとは、AI(人工知能)を用いて画像を解析する技術の総称です。簡単にいうと、画像認識+画像分析の2つのプロセスで構成されます。以下で詳しく説明します。

画像認識

画像認識とは、人間が目で見て物事を判断するように、コンピューターが画像や映像を見て、何が写っているかを理解する技術です。

例えば、あなたが犬の写真を見たら「これは犬だ」と分かるでしょう。 画像認識を使うと、コンピューターも同じように写真を見て「犬」だと判断できます。 様々な犬種、様々な角度から撮られた写真を見せることで、コンピューターは「犬とは何か」を理解し、新しい写真を見せても犬を認識できるようになるのです。

人間では見分けづらい細かい違いや、大量の画像を素早くチェックすることも得意なため、医療現場での画像診断や、工場での不良品検出など、様々な分野で活用されています。 身近な例では、スマートフォンの顔認証機能にも画像認識の技術が使われています。

画像分析

画像分析とは、AIがまるで人間の目のように画像を見て、何が写っているかを理解した上で、その意味や状態、動きなどを深く掘り下げて解析する技術です。

例えるなら、医師がレントゲン写真を見て「骨が折れている」と判断するだけでなく、骨折の程度や周りの組織への影響まで詳しく分析するようなものです。他にも、工場で製品の画像を分析し、小さな傷や変形を発見して不良品を選別する、といった使い方もされています。

 

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AIを使わない画像解析とは

AIを使わない画像解析は、あらかじめ設定された規則に基づいて画像を解析する技術です。AIのような学習プロセスを経るのではなく、特定のアルゴリズムやルールを用いて画像の特徴を捉えます。画像処理の初期段階や、シンプルな画像認識が必要な場面で有効な技術です。

身近な例として、バーコードリーダーが挙げられます。バーコードリーダーは、黒い線と白い部分の間隔という規則的なパターンを認識することで、コード化された情報を解析します。

画像解析AIの仕組み

ここからは画像解析AIの技術・仕組みを以下の3つに分けて解説します。

  • 画像分類
  • 物体検出
  • セグメンテーション

画像分類

画像分類とは、画像全体を見て何の画像か判断する技術です。大量のデータをインプットすることで判断しています。例えば、猫の画像を入力すると「猫」というラベルをAIが出力します。画像分類は、画像認識の中でも最も基本的な技術です。物体検出やセグメンテーションは、この画像分類をベースとしています。

画像分類は、様々な分野で活用可能です。例えば自動運転では、前方の物体が車なのか、人なのか、信号なのかを分類することで車を運転しています。医療分野ではレントゲン写真から病気を診断するために利用されています。

物体検出

物体検出とは、画像の中から特定の物体を検出し、その位置を特定する技術です。画像認識が画像全体の内容を認識するのに対し、物体検出は画像内のどこに何が写っているのかを認識します。

例えば、1枚の写真の中に「人」「車」「信号」が写っているとしましょう。画像認識では「道路の風景」といった全体の状況を認識しますが、物体検出では「写真の中のこの位置に人がいる」「この位置に車が停まっている」といった情報まで取得できます。物体検出は、防犯カメラの映像解析や自動運転技術など、幅広い分野で活用されている重要な技術です。

セグメンテーション

セグメンテーションは、ピクセル単位で画像内の物体や領域を識別する技術です。大きく分けて、以下の3種類があります。

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セグメンテーション技術は、医療画像における疾患の発見や自動運転における歩行者・車線の検知などに応用されています。

 

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画像解析AIのメリット

画像解析AIを活用することで、次のようなメリットがあります。

  • ヒューマンエラーを減らせる
  • 大量のデータを処理できる
  • 高い認識精度で無駄を減らせる

ヒューマンエラーを減らせる

工場の生産ライン等の検品作業における人間の目による検査では、長時間作業による集中力の低下や担当者による判断基準のばらつきなど、ヒューマンエラーが発生するリスクが伴います。一方AIによる画像解析なら、24時間365日休むことなく、常に一定の基準で正確に画像を判断することが可能です。

例えば、工場の生産ラインにAIを組み込んで製品の画像を高速かつ正確に解析させることで、不良品の見逃しを大幅に削減できます。また、医療現場では、レントゲン写真やCT画像から微細な病変を見つける際に、AIの精度の高さが診断の確実性を向上させます。人間の能力では不可能なレベルの精密な分析をAIなら実現できるのです。

大量のデータを処理できる

AIは、人間では処理しきれない量の画像データを瞬時に解析し、必要な情報を抽出できます。

例えば、ECサイトの商品画像を一括でタグ付けしたり、監視カメラの映像から特定の人物を探し出すといった作業を自動化することで、業務効率を飛躍的に向上させることが可能です。データ処理作業をAIに置き換えることで、人間はより重要度の高い業務に集中できるようになり、生産性向上に繋がります。

高い認識精度で無駄を減らせる

AIの画像認識精度なら、複雑なパターンや微細な特徴を正確に捉え、人間では見逃してしまうような欠陥や異常を検出することが可能です。

例えば製造業では、製品の品質検査においてAIを活用することで不良品の出荷を未然に防ぎ、コスト削減に繋げられます。医療分野では、AIによる画像診断により、早期発見が難しい病気の診断も見つけられるようになりました。

AIを取り入れることで、コストを抑えつつ、人間ではできなかったレベルの異常を見つけられるようになっています。

画像解析AIのデメリット

画像解析AIにはまだまだデメリットもあります。

  • 誤って検出されるリスクがある
  • ブラックボックス問題
  • 学習データの確保が難しい

AIを導入する前に、これらのリスクを知っておきましょう。

誤って検出されるリスクがある

もちろん画像解析AI誤認識が発生する可能性があります。例えば、学習データに猫の正面画像しか含まれていない場合、猫の後ろ姿は認識できないかもしれません。また、荒い画像や暗い場所での画像はAIが特徴を正しく捉えられないでしょう。

このようなリスクを最小限に抑えるためには、人間による最終確認が重要です。AIによる解析結果を鵜呑みにするのではなく、人間が最終的にチェックすることで、誤認識による問題発生を未然に防げます。

ブラックボックス問題

AIの内部処理は複雑で、判断プロセスが人間には理解しにくいという「ブラックボックス問題」が存在します。つまり、AIがなぜその結果を出したのかを説明することが難しいのです。

医療診断や自動運転など、人命に関わる分野では、AIの判断根拠を理解することは非常に重要です。AIの判断が間違っていた場合、その原因を特定し改善するためにも、AIの思考回路を理解する必要があります。

この問題に対処するため、現在、説明可能なAI(XAI)の研究が進められています。Grad-CAMなどの可視化手法を用いることで、深層学習モデルの解釈性をアップさせ、AIの判断根拠が理解しやすくなるはずです。

参照:Grad-CAM : Visual Explanations from Deep Networks via Gradient-based Localization

学習データの確保が難しい

高精度な画像解析AIを開発するためには、高品質な学習データが大量に必要です。しかし、データの準備には、多くの時間と労力がかかります。収集だけでなく、データに偏りがないように調整したり、それぞれのデータに説明(アノテーション)を付けたりしなければなりません。十分な学習データがない場合、AIの精度が実用的なレベルに達しない可能性があります。

この問題を解決するために、当社では学習データが少なくても高い精度を担保できるようなAI技術の開発を進めています。詳しく知りたい方は、問い合わせ窓口までご連絡ください。

画像解析AIでできること

画像解析AIは以下の分野で実際に活用されています。

  • 自動運転
  • 人物識別
  • 文字起こし
  • マーケティング

自動運転

車にカメラとセンサーを取り付け、AIが周りの状況を人間のように認識することにより、自動で車を運転できます。前を走る車や歩行者を見つけて適切な距離を保ったり、赤信号で止まったり、白線をはみ出さないように走ったりすることも可能です。将来的には、人間が運転しなくても目的地まで安全に到着できる完全自動運転を目指して、技術開発が進められています。

人物識別

空港や商業施設などでよく見かける顔認証システムは、AIで人物を識別する代表的な例です。カメラに映った人の顔を分析して本人確認を行い、建物への入退室管理や防犯に役立てています。

最近では、スマートフォンのロック解除や、コンビニの無人レジでの支払いにも使われ始めています。ただし、プライバシーの保護の観点から、実用化が難しいといわれています。

文字起こし

紙の書類や手書きのメモに書かれた文字を、AIがカメラで読み取ってパソコンで編集できる文字データに変換します。大量の紙の資料をスキャンしてデジタル化したり、手書きの議事録を文字データにしたり。文字の形や大きさが異なっていても、高い精度で認識できるようになってきており、オフィスの業務を大幅に効率化できます。

マーケティング

店舗に設置したカメラの映像をAIで分析することで、お客様の年齢層・性別・人気の商品棚・混雑する時間帯などを把握できます。このデータを活用すれば、商品の配置を工夫したり効果的な販促活動を行ったりできます。一人ひとりの購買履歴に基づいて、その人に合った商品をおすすめすることも可能です。

 

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【業界別】画像解析AIの活用方法

最後に以下の業界で画像解析AIがどのように活用されているかをご紹介します。

  • 製造
  • 物流
  • 医療
  • 福祉
  • 農業

製造

工場の生産ラインでは、AIカメラを使って製品の品質チェックを行っています。人の目では見落としがちな小さな傷や汚れも瞬時に見つけられるため、不良品の混入を未然に防げます。

例えば、スマートフォンの液晶画面の細かい傷や、自動車のボディの塗装ムラなども瞬時に発見。作業員がロボットなどの危険な機械に近づきすぎると、自動的に警告を出して事故を防ぐこともあります。品質管理の精度が上がり作業員の負担も減るため、多くの工場で導入が進んでいます。

物流

倉庫では、AIカメラが商品の仕分けや在庫管理を手助けしています。商品のバーコードや形を自動的に認識して、配送先ごとに正確に仕分けたり、在庫数を自動的に数えたりできます。

スーパーの物流センターでは、野菜や果物の鮮度をAIが判定し、最適な配送順序を決めることも可能。作業の無駄も見つけやすいため、倉庫全体の業務効率が大幅に改善されています。

医療

病院ではレントゲンやMRIの画像をAIが分析し、病気の早期発見に役立っています。手術中も、カメラの映像をAIがリアルタイムで解析して医師をサポート。患者さんの体の位置調整なども自動で行えるため、医療スタッフは診察や看護により多くの時間を使えるようになっています。

福祉

視覚障がいのある方の手助けとして、AIカメラが活躍しています。

視覚障がいのある方向けのスマートフォンアプリでは、カメラで捉えた周囲の状況を音声で伝えます。例えば、「前方3メートルに階段があります」「右手に自動販売機があります」といった具合です。高齢者施設では入居者の見守りにも使われており、転倒などの緊急事態にもすぐに対応できる体制を整えています。

農業

広大な農地の管理には、ドローンに搭載したAIカメラが大活躍しています。上空から撮影した写真を分析して作物の育ち具合を確認し、必要な場所に農薬や肥料を効率よく散布。病気や害虫の発生を早めに見つけられるほか、収穫時期も判断できるため、農作物の質を保つために一役買っています。

まとめ

今回は画像解析AIについて詳しく解説しました。画像解析AIとは、人工知能を用いて画像データから意味のある情報を抽出する技術です。画像認識や画像分析といった手法があり、様々な分野で活用されています。業界を問わず、画像解析AIは私たちの生活をより豊かに、そして社会をより便利にする可能性を秘めています。

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