◆ということで、【図02】【図03】をもう少し何とかしたい場合、【図04】のような方向性はありでしょう。この処理であればデザインの範疇だからです。ただし、もし本文が詩や物語で背景のイメージとの連動が大きなウエイトを占めてくる場合だと、話は逆転してしまうことがあります。
もちろん、これは基本的な印刷に関わるマナー的な部分であり、一頃よりは沈静化してきています。しかし、例えばデザインをしているはずが、いつのまにかその場繕いのデコレーション処理に陥ってしまったなどということがあるのではないでしょうか。
 もっともわかりやすいのが、よく見かけるフィルタ処理一発的なデザイン*です。文字組みでいえば、特殊な場合を除き、本文での極太文字や、サイズ拡大のために、行間をなくすことでスペースを確保する代償として文字を平体処理するといったことはありませんが、それらに近い類似的な処理はついつい犯してしまうのではないでしょうか。
     
アナログ時代、ある著名なデザイナーの仕事を間接的にアシストすることがありましたが、箔押しのグラデーションという『何それ?』というべきデザインスケッチを見た時、駆け出しの私はそれが可能になったのかもしれないという期待で妙に興奮したのもつかの間、やはりできないことを知り、『天下の大先生は実際に仕事していないかもしれない』と感じました。きっと、箔押しの後に4色印刷を行なうつもりでデザインを考えていたのでしょう。箔押しというくらいですから、普通に考えても最後だと思うはずですが。

*【フィルタ処理一発的なデザイン】アプリケーションにデフォルトで用意されている様々なエフェクト機能などを使っただけで、他にこれといった工夫のないデザインのこと。実際にはフィルタ処理自体が悪い行為ではなく、単に誰がやっても同じような結果にしかならない処理を総じて指す時に、私が用いる言葉です。例えば、市販のフォントをアウトライン化しただけなのにロゴタイプとして宣言してしまうような行為。それはデザイナーの仕事ではなく、フォントを作成したデザイナーのデザインでしかありません。

【図04】【図03】を更にデザインし、『難しい』の『難』という漢字を大きく背景にとけ込ませることでインパクトを演出してみました。ヒラギノ行書体W4を使用。
 
     
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