わかっているようでも、実はコンピュータでの処理が日常化してしまうと、勘違いと混乱が交差してしまい、注意していないと無意識のうちに悪い方向に走り始めてしまいます。
 例えば、最近のモニターの解像度は100dpiぐらいが一般的です。昔のように72dpiであれば、モニター上のサイズと実際のサイズは合致しますが、解像度が上がると実際のサイズよりも小さく表示されてしまうために、文字サイズを大きく設定するミスを犯しやすくなります。それと、仮に実際のサイズと同寸でモニターに表示されていたとしても、それはあくまでもモニター上での世界であり、印刷されたイメージではありません。ですから、一定の仕上がりに至った段階でプリントアウトした結果でチェックする習慣は、今も変わらない大切な確認手段だと感じています。
そんな前置きを立ててから、ここで私が【図02】【図03】で、あえて本文の下にデザイン要素を入れたのは意地悪な解説だと気が付いた方はどれだけいましたか? 本文の文字サイズにもよりますが、ベタ塗りではなく、グラデーション、あるいは複雑なデザイン要素の上に文字を入れる場合、作例のように白抜きで本文を指定すると、版ずれが発生したときに悲惨な結果となってしまいます。もちろん、印刷精度が向上している現在では、ある程度の大きさであればおおむね問題のない範疇となりますが、本文組みではやはり避けたい処理です。
 同様に、箔押しなどのデザインをする場合、印刷工程での箔押しの順番が理解できていないと不可能なデザインをしてしまったりします。コンピュータ処理による自由度が高まったことで、なんでも自由にモニター上で表現できることが、印刷でも可能と思われがちな風潮には注意を払いたいと思います。
特に最近のデザインは、印刷物を作成することだけではなくなっており、さまざまなアウトプットに合わせたデータの共有も珍しくないので、デザイナーには今まで以上に多方面の知識が要求されるようになってきました。
 もし印刷所の方と親しくなることがあれば、見学させてもらうなどして印刷の流れを実際に確認したり、新しいサービスについて説明を受けたりしてみることも大切だと思います。現在は、そうでもしないとプロのデザイナーでも、新しい技術や表現方法に乗り遅れてしまうような状況になっていることを強く感じています。
     
    123456789101112