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2014年05月07日 | 線幅補正に関する留意事項

■概要(下記の図はすべて概念で、実際の演算はもっと複雑です)
sample.png線幅補正(SA : stroke adjustment)は、特に低解像度で目立つ罫線の不揃いの問題を改善するために、PDFやPostScript上のstrokeに対する描画属性(Graphics State)の1つとして設定されます。
SAは明示的に指定するものではなく、例えばIllustratorの罫線の場合、SAは自動的に指定されます。
ブラシ、途中で線幅が変わるプロファイル指定付きの線、パスに沿って/交差してグラデーションを適応された線は、塗りになるのでSAは指定されません。

sa_on-off_diff.pngSAがfalseの場合、strokeは数値上は同じ線幅であっても、配置位置に応じて実際に描画される線幅は異なります。
SAがtrueの場合、この様な不揃いの問題を解決するために、strokeの数値的な配置位置を最大で0.5デバイスピクセル分移動した上で、理論的なデバイスピクセルと実際のデバイスピクセルの差が0.5ピクセル以内になる様に線幅を調整してからビットマップに展開します。
この補正は、特に細い線を低い解像度のデバイスに出力する際の問題を低減しますが、このわずかな移動と線幅の調整による副作用もあります。
データ制作においても、このSAの挙動を理解しておく事で、トラブルを未然に防ぐことができます。
これらの記事でもSAによる影響について記載しています。
2012年05月02日|Adobe Creative Suite 6 (2) - 線にグラデーションを適応
2011年01月31日|太らせた文字がかすれた様に出力される問題

以下に、この2つの記事での記載内容も含めて留意事項を列挙します。

■留意事項
【留意事項1】透明があるとSAは処理されない

ページ上に1つでも透明オブジェクトがある場合は、そのページ上の全てのstrokeに対するSAは無効になり線幅の調整は行われません。 (え~)
この仕様には理由があります。例えばドロップシャドウなどの透明の影響により、図形化され太くなるstrokeと、透明の影響を受けないstrokeとの本来は同じ線幅のはずの線幅の違いが、透明領域の境界で段差の様に見える、という問題が考えられます。この段差を低減するというか太さの違いを散らすために、この様な仕様になっています。
しかし、面付けなどで別のページが同一面に配置される場合、あるページには透明オブジェクトがなくても、同一面の他のページに透明オブジェクトがある場合、RIPとしてはその面の全てに対してSAを無効化して処理されます。

【留意事項2】オーバープリントがあるとSAは処理されない場合がある
オーバープリントは基本的にはSAの処理には影響を及ぼしませんが、出力処理でデバイスリンププロファイル(インキセービングなど)を効かせる場合は、オーバープリントは透明と同等の処理となり、【留意事項1】と同じ様に、SAは無効になります。

sa2.png【留意事項3】罫線をつなげて並べても境界にスジが入る場合がある
2本のstrokeの位置と線幅が、理論的にはピッタリとつながる様に配置しても、SAの調整により、隙間が空く場合があります。
problem.png
【留意事項4】文字に罫線を設定して太らせた文字がかすれた様に出力
○原因
・文字に指定した罫線にはSAが効いて移動する
・文字の本体はストロークではなく塗り(strokeではなくfill)でSAは影響しない
・フォントのHint処理により別の基準でわずかに移動する
○回避策
・文字にデバイス1ピクセル以下の細すぎる線は設定しない
・文字をstrokeで太くするのではなく、太い書体を使用する

clip_and_stroke.png【留意事項5】罫線の外形でクリップしても期待通りにならない場合がある
細い罫線の外周に沿ってクリップした場合、SAの記述によりstrokeは調整されますが、クリップ図形は調整されないので、クリップ図形との位置関係で一部の罫線が消えたり細くなる事があります。

■まとめ
ストロークは線幅補正処理が行われることを前提に考え、線幅の再現性についてデバイス1ピクセルの精度を求める様な配置は避けるべきです。
重要なことは「透明が1つでもあるとSAは無効化される」ということです。
出力の検証では、この例だけでなく、透明の有無によって、結果が変わるケースが少なくありません。透明のある場合とない場合の両方で検証することで、出力の振る舞いを正確に把握することができます。

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