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2013年08月27日 | 特色指定は正しく - 擬似色がLabの場合に注意

あらかじめ、過去記事「Adobe CS6における特色指定」をよく読んでおくことをオススメします。

■概要
IllustratorやInDesignにおいて、Labで定義された特色がDeviceNで使用されるケースで、書き出されるPDFに記述の間違いがあり、擬似色出力において不正な色で出力される問題があることが分かりました。CS3~CCの全バージョンで確認しました。
この問題は、特色の擬似色出力をせず、特色版として出力する場合には問題ありませんが、4色しか使えないカンプ出力では問題となるので、十分な注意が必要です。
特に特色グラデーション、混合インキスウィッチなどで問題となる場合が多く、EQUIOS / Trueflowでは入力処理ではなく出力処理で擬似色化することで回避可能です。
間違った特色指定はこの問題を大きくします。印刷で本当に特色インキを用いて刷る場合にのみ、DTPアプリケーションで特色指示を行う事が、回避策を有効にするためにも重要です。

swatch.png■症状
発生条件を満たした場合、以下の様に特色の色が不正になります。色の変化の差は、元の色の成分などに依存して彩度が低下する傾向があり、場合によってはグレーデータの様に見える場合があります。
下図の場合、下部の単色の特色の塗り (はSeparationになります)の方の色も若干変化していますが、この変化はあくまでも擬似色の範囲内 (OK) ですが、グラデーションの方の差違は問題 (NG) となります。

DeviceN_lab.png

この問題はAcrobatのインキダイアログで「全てのスポットカラーをプロセスカラーに変換」をOnにしても確認できず、出力してみないと分かりません。(下記■留意事項にある通り、Macのプレビューなら表示するだけで色の変化が分かるのに…)

■発生条件
この問題は以下の条件を全て満たした場合にのみ発生します。
1) 特色の擬似色がLabで定義されている
2) その特色を含む色が使用されたDeviceN  (特色グラデーションや混合インキスウォッチなど)
 →AdobeのDTPアプリケーションは1)2) で間違ったデータを生成します。
3) EQUIOSやTrueflowの入力演算で疑似色化  (EQUIOSやTrueflowはデータ通り処理をしているだけなのですが…)

■発生原理
過去の記事「Adobe CS6における特色指定」にある通り、Adobe CS6以降では特色データが持っている擬似色(代替色、Proxy Colorなどとも言われます)として、特に注意をしなければLabで定義されるケースが多くなります。
下記のとおり、特色ライブラリによっては、CS5以前でもLabが指定されるケースがあります。

 ・CMYKで定義される 例:PANTONE+ CMYK Coated (CC, CS6) , PANTONE color bridge CMYK ( CS5以前 )
 ・Labで定義される 例:PANTONE+ Solid Coated (CC, CS6) , TOYO COLOR FINDER (全て)
 ・CMYKとLabの両方で定義される 例:PANTONE Solid Coated (CS5以前) , DICカラーガイド (全て)

・単色の特色の場合は、特色スウォッチに定義された擬似色の値がそのまま使用されます。
・複数の特色を含む色が使用されるDeviceNでは、各々の特色の擬似色だけでなく、DeviceNの色指定からプロセスカラーでの擬似色を求めるための計算式が今回の場合はIllustratorやInDesignによって記述されます。擬似色がLabで定義されている場合に、この計算式に間違いがあり、今回の問題が発生します。
・この問題の発生しないアプリケーションは、この記述上の計算式を使用せず、DeviceNを構成する各々の特色の擬似色から、内部的に生成した同様の計算式から出力色を求めています。
・この2種類の変換方法は本来どちらも同じ色になるはずが、片方が間違っているので、出力環境の実装によって結果が変わってしまいます。

■回避策
・特色の擬似色としてLabを使わない (過去記事参照)
・EQUIOSや、Trueflow (最新演算処理)の出力演算で疑似色化する
(出力演算では上記の「内部的に生成した同様の計算式」で演算しているので、この不具合の影響を受けません。
→出力での疑似色化では、特色のオーバープリントや透明も擬似色として合成される仕様なので、特色のノセや透明はをカンプで確認する場合は、出力側での疑似色化を推奨します。

■2サイト運用
製版サイトと刷版サイトでOutlinePDF-Advanceを受け渡す2サイト運用の場合は、以下の2つのケースで運用が変わります。

・本当に特色インキを用いた印刷を行う場合
この場合はOutlinePDF-Advance上には特色データを残しておくので、製版サイトでの4色プリンタでカンプ出力するときに、出力処理で擬似色化します。
刷版側では特色版を別の版で出力する事で正しく処理できます。

・間違った特色指定を擬似色化して印刷を行う場合
間違った特色指定を擬似色化する場合は、製版側で特色データを擬似色化してからOutlinePDF-Advanceに変換する必要があるので、回避が困難になります。
カンプと印刷物は一致しますが、期待とは違う結果になります。回避にはデータのチェックを厳密に行う必要が出てきます。
データ制作時に間違った特色指定をしないことが重要です。

spot_option_CS6.png■<考察>なぜ今まで見つからなかったのか?
この問題は、CS3以降の全バージョンで発生する問題ですが、なぜ今まで見つからなかったのか考察します。
1) CS6未満は両方の擬似色を持っている場合、CMYK優先だった
2) Labのみの擬似色のカラーライブラリが少なかった
(TOYO COLOR FINDERくらい←カラーライブラリも悪くない、悪いのは…)
3) 特色グラデーションや混合インキスウォッチはあまり使わない?
(特色のつもりじゃない間違った特色指定のグラデーションならあったかも)

■留意事項
・この色の変化はAcrobatでは再現されません
Macのプレビュー、FireFox (+Acrobat XI Plug-In)、AD-810MX (CPSIベースのRIP) などで同様の色の変化が見えます
問題回避のためにCS5形式に変換しても、この問題は回避できません。例えば、PANTONE Solid Coatedを使ってCS6 (Labのみの特色ライブラリ添付)でこの問題が発生したデータを、CS5形式に変換しても、この問題は回避できません。CS5には CMYK/Lab両方の特色ライブラリ添付していますが、「CS6で作成したCS5形式」にはCS6の特色ライブラリが含まれており、CS5で開いてもそれが使われるので、擬似色はLabになってしまいます。一度、全ての特色設定を削除して、CS5の特色ライブラリで設定し直す必要があります。
やっぱり、Illustratorの「以前の形式」は推奨できません。

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