文字サイズ

大和ハウス工業株式会社さま導入事例

戸建住宅から大型建築、都市開発までを手掛ける建設業界大手の大和ハウス工業株式会社さまから
『自然言語処理を活用したAI』の導入事例を伺いました。
CS統括部門が、大幅に業務効率を改善できた事例とは?

system_flow.jpg

プロフィール

CS統括部門 CS統括部門は、CS推進部、CS企画部から構成される。
CS統括部門では点検業務を含む、契約からお引き渡し後まで長期にわたる各種データを一元管理し、有益なデータとして活用している。


武田英明さま〈CS企画部 担当部長〉 お客さまからの声と世の中の最適な技術を組み合わせ、社内業務の改善と顧客満足度向上の視点から新たな提案や企画を行う。


井谷佳史さま〈CS企画部 主任〉 情報システム部から総合技術研究所に異動後、ITを活用した研究に取り組む。貴重な財産として、長年にわたり蓄積されているさまざまなデータを利活用した改善提案を行う。



株式会社SCREENアドバンストシステムソリューションズ

豊福 英雄(第二開発部 部長)

粕渕 清孝(第二開発部 専門職)
提案、PoCと開発マネージメントを担当

吉田 明子(第二開発部 主事)
AIをはじめ開発全体を担当


課題と効果

課題

  • 熟練者のノウハウ・活用が急務(熟練者の高齢化)
  • 現場担当者の業務負荷軽減(複雑な選択項目が入力の負担)

効果

  • 問い合わせを指定するだけで原因を的確に推定
  • 解決までの時間を、大幅に短縮

使用した製品

  • AStrigo Text Classification(原因推定AI)

INTERVIEW

2018年のPoCコンサルティングを始まりとして、大和ハウス工業さま(以降、大和ハウス工業)では当社(SCREENアドバンストシステムソリューションズ/以降、SCREEN AS)とともに、2020年1月に、問い合わせ内容の『原因を推定する精度向上』に目処を付けるに至りました。

業界全体の課題

長く使用される建築物は、長期にわたるお客さまとのお付き合いや、幅広い問い合わせ内容が特徴です。一方で、サービス部門担当者の高齢化は、業界全体の課題のようです。

大和ハウス工業が抱えていた課題

jirei01-intv01.png

業界全体の課題は、具体的な現象として現れていたのでしょうか。

「現場には熟練者が多く、そのノウハウを経験の浅い担当者に伝承することが急務でした。 お問い合わせの受け付けから是正完了までのプロセスは、すでにシステム化されています。目的は、お客さまとのリレーション履歴を管理し、素早くスムーズに対応することです。熟練者は登録すべき内容を熟知していますが、システム操作が得意でない者も多く『入力が面倒』と思われていました。」

jirei01-intv02.png

では、経験の浅い方にとって、システムはどんな存在だったのでしょう。

「今までのシステム操作画面(右図)では、問い合わせを受けたときに、手入力を繰り返して原因を探していました。経験の浅い方の場合、適切な項目を探し出すことが難しいため、『項目を探すのが大変』『正しい項目が分からない』など、評判は芳しくありませんでした。そうして登録されたデータの質は高いとはいえず、これも大きな課題でした。」

『入力が面倒』な原因は項目数の多さでしょうか。

「そのとおりです。項目選択の組み合わせは60,000通り以上。階層構造の管理が複雑なため、指示のやり直しや再入力も招いていました。その結果、工事や部品の手配などで誤った指示が出されたため手戻りが発生することがありました。そこで、AIを活用することで的確な指示が出せないかと考えました。」

開発迅速化のポイント、データの運用イメージ

データの管理は、明確な運用をイメージされていましたか。

「私たちの業務の一つが、データ利活用を行うことで、的確に業務効率化や商品改善を提案することです。データ活用の目的を明確にすることは当然でした。」

目的意識を持ち、整理・蓄積されてきたのですね。AIの利活用に影響を与えそうです。

jirei01-intv03.png

SCREEN ASへの信頼と確信

jirei01-intv04.png

IT活用に向け研究を続けていらした井谷さんの日常業務をお聞かせください。

「研究所に所属していたことがあり、非構造化データの利活用をテーマに独学でAI開発を試行していました。その中でユーザ辞書作成の必要性を感じていた当社にとって、展示会で出会ったSCREEN ASの自然言語処理に魅力を感じました。」

多くのIT企業が技術を競い合う中、SCREEN ASはどのように映りましたか。

「母体が製造業であり、そこで培ったノウハウを切り離して設立したシステム開発会社ということから、われわれの課題を解決してくれるのではと期待できました。」

コンサルティングからの始まり

jirei01-intv05.png

「AI開発に関し、SCREEN ASに相談してみたところ、親切に教えていただき解決。抱えていた課題も含めて、コンサルティングの依頼を決めました。」

自然言語処理のエキスパートとして、ご一緒することになりました。

「AIを活用するからには、良い結果を求めたい。われわれの思いに対し、見直しポイントや将来展望も含め、要求内容をうまく整理していただけました。開発力への期待とともに、われわれに寄り添うような丁寧な応対を実感しました。」

コンサルティング担当の立場からは、どのような印象でしたか。

「大和ハウス工業のデータ管理状況は、AI活用には理想的でした。ただ単にデータを取るだけではなく、利用目的が明確だったこともあり、効果的なアドバイスをお伝えできたと感じています。」

特徴的なAIを開発

jirei01-intv06.png

開発担当からも、話を聞きます。

「蓄積されてきたデータは維持しつつ、入力の手間を軽減、回答精度を向上させることがミッションでした。そこでチャレンジしたのが、『階層構造を保持できる独自AIの開発』でした。熟練者のノウハウを学習することで推定できます。
自然言語処理に関するエキスパートとして、さまざまな開発を手掛けてきました。また、SCREENグループの会社から提示される課題解決を知見として蓄積しています。大和ハウス工業のご要望に照らし合わせ、『原因推定AI』の採用の有効性は確信していました。しかし、階層構造で管理されるデータには工夫が必要だと考え、独自技術として新たなAIを開発しました。」

PoCを活用し、製品化へ

開発に先駆けた、社内への働き掛けをお尋ねします。

「実際に動きをつかんでもらえる試作版を自作し、理解を得られました。」

今回のプロジェクトでの、テストやPoC(Proof of Concept)の実施についてお聞かせください。

「このプロジェクトでも、PoCを実施いただきました。独自のAIが必要になると考えており、結果を納得後、本番開発へのステップを踏み、製品化までを1年で進めました。」
「データが理想的な状態で管理されていたことも、開発を後押ししてくれました。AI活用の明確なゴール設定も、重要なポイントでした。」

jirei01-intv07.jpg

では、ここでテストの結果をお聞かせください。

「回答精度の目安は、お聞きしていました。どこまで対応できるのか。評価をお聞きするまでは不安に思っていました。」
われわれのテスト結果は80%以上。正確には83.2%の高精度でした。原因の推定精度が80%以上のため、課題であった解決までの時間短縮も見込めます。」

非常に高い回答精度が、作業効率を大きく改善できそうです。
作業時間としては、いかがでしたか。

「10分の1に削減できました。複数の項目を選択するごとに応答結果を待ち、入力完了まで最低でも9ステップ、3分程度を要していました。それが、確認して選択してOKを押すだけという2ステップで済むようになりました。」

jirei01-intv08.jpg

テストに協力された社内関係者の方からは、どのようなコメントが得られましたか。

jirei01-intv09.jpg

早く使いたい。いつから使えるのか?と、前向きなコメントばかり。将来を見据えた、データの質的向上も解決できると考えています。使えば使うほど賢くなっていくシステムですから、将来も安心です。」
「再学習や拡張性についても考慮して開発したかいがありました。」

今後の展望、SCREEN ASへの期待

jirei01-intv10.jpg

では、さらなる課題に向けた取り組みについて、お聞かせください。

「装置メーカーの立場から、スマートハウスに関して興味を持っています。」
「当社ではスマ・エコという名前でエネルギーの見える化や効率化に取り組んでいます。今後はさまざまなデータを蓄積、利用することが可能になります。収集できるデータを活用し、さらなる快適さ、有益な情報などを提案できればと考えています。原因推定AIとの親和性も良いかもしれません。」

jirei01-intv11.jpg

AIの活躍の場は、他にもありそうです。

「点検時の画像も活用できると、より一層の効率化が望めると見込んでいますが、課題もありそうです。課題クリアに関しても、SCREEN ASからのアドバイスに期待しています。」
 「長年、画像を研究・開発してきた点にもご期待いただいているのは、励みになります。ご要望を形にすべく、今後も丁寧な対応を心掛けていきます。」

 

成功事例に続き、今後の展望もお聞かせいただき、ありがとうございました。
開発の完了が見えた今、大和ハウス工業とSCREEN ASが取り組む新たな課題。完成の際には、また、お話をお聞かせください。

本記事は2020年9月に取材した内容に基づいています。組織、役職、製品などの名称は、取材時点の内容です。