エッチングとは、薬品やイオンの腐食作用を使ってIC の回路を形成する工程である。さきほどの現像工程でレジストが溶けた部分の下にある層を溶かすなり削るなりして、回路を作る。
エッチングの方法にはウェット式とドライ式の2つがある。
ウェットエッチングとは、硫酸、硝酸、りん酸、フッ酸などの薬液で腐食を行う方法である。装置としては薬液洗浄のときと同じウェットステーションが利用できる。また、小ロットのウェーハをエッチングするときや、1 枚1 枚のウェーハに特殊なエッチングをするときには、スピンプロセッサを使う。
一方、ドライエッチングとは、液体の薬品を使わないで腐食を行うものである。代表的な例としてはRIE(reactive ion etching =反応性イオンエッチング)がある。これは、酸のように腐食性のあるイオンをぶつけて、レジストに覆われていない部分を削り取る方法である。
ウェットエッチングとドライエッチングにはそれぞれの利点がある。
ウェットエッチングのメリットはコストが安くて生産性が高いことである。装置価格は1 億円〜3億円程度で、薬液も半導体関連材料としては安いうえ、1 度に50 枚などのバッチ処理も可能だからだ。
ドライエッチングの利点は細かい回路を作るのに適していることである。右図のように、ウェットエッチングは横方向にも進むため、あまり細かい回路をエッチングするとレジストが落ちてしまう。しかしドライエッチングは垂直方向だけに腐食が進むので、微細な回路も確実に作れる。ただし、ドライエッチング装置は価格がウェットの2 倍以上で高い。また、ドライではウェーハのまとめ処理ができず、1 枚ずつエッチングしなくてはならない。
以上のことから業界では、ラフな回路はウェットエッチング、微細な回路はドライエッチングという使い分けをしている。
なお、半導体回路は微細化が進んでラフな回路が減っているため、現在のエッチング工程の9 割以上はドライで行われている。
ドライエッチングで使う反応性イオンのパワーは大変強いもので、処理対象の膜が十分に腐食される頃には、保護膜の役目をしているレジストも半分以上消えてなくなり、その一部は変質してポリマと呼ばれるものになる。このポリマを半導体回路に付着したまま放置するとIC の欠陥につながる。そこで、ポリマの除去に使う専用機が必要となる。
ポリマを取り除くには、ウェットステーションかスピンプロセッサで薬液を使って洗浄する。