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Semiconductor 初心者のための半導体入門

その他の製造プロセスおよび新技術
Cu 配線

Cu 配線

IC の動作速度を上げるための技術。従来のアルミニウム配線ではこれ以上微細化が進むと、IC 回路を流れる電気信号の速度に限界(専門用語では「配線遅延」という)がある。そこでもっと電気の通りがよい銅(Cu)配線を使う。Cu はアルミよりも電気抵抗が低いので、細い配線にしても電気がスムーズに流れる。

なお、このCu 配線を使うことで、いくつかの新しい工程が必要になってきた。それは以下のとおり。

(1)Cu めっき

従来から存在するスパッタでCu の膜を作ることもできるが、半導体メーカーはもっと低コストでCu 膜を作りたいと考えている。そこで期待されるのが電解Cu めっきである。この方法は、硫酸銅などを成分とした溶液にウェーハとCu の塊を漬けて電気を流すことにより、ウェーハの表面にCu をめっきするものである。スパッタに比べて材料コストが低いうえ、生産性も高い。ただし、均一性はスパッタよりも低い。

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(2)ダマシン

Cu の層を上から削って配線パターンを作っていく工程。ここではCMP 装置が使われる。工程は右図のとおり。まずSiO2 などのエッチングしやすい絶縁膜の層に溝を作る。次に電解めっきでその上にCu の膜をつける。それからCMP 装置で上部のCu を削り取ると、SiO2 層の溝の中にあるCu だけが残り、配線ができる。

なお、Cu 配線はドライエッチングで作ることも理屈のうえでは可能である。しかし、Cu とプラズマイオンの反応速度は大変遅いので、十分な生産性は得られない。そこで、いっそのことCMP装置で削る「ダマシン工程」を採用したほうがマシということになった。

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(3)Low-k 膜形成

Low-k 層間絶縁膜(低誘電率層間絶縁膜)は、わかりやすく言うなら「電気の流れにくい絶縁膜」である。電気の流れ易いCu 配線と電気の漏れにくいLow-k 絶縁膜を組み合わせると、極めて高速で動作するIC ができる。従来のアルミ配線の時代は層と層の間の絶縁膜にSiO2 を使っていたが、SiO2 の比誘電率は4.1 である。一方、Cu 配線で使うLow-k 膜の比誘電率と言えば、一般に3.0 以下を指す。また、Low-k 膜を作るには2 つの方法がある。それは、CVD 方式とSOD 方式である。

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a)CVD(化学気相成長)方式

これは、CVD 装置を使ってSiO2(ガラスと同じ成分)に炭素などを混ぜて陶器と同じ成分の絶縁膜を作る方法である。陶器はガラスよりも誘電率が低いうえ、強度も十分にあることから、この方法はすでにIC の量産向けとして広く実用化している。

ただし、陶器系の材料で達成できるk 値には限界(おおまかな目安としてk = 2.5 くらいまで)もある。そして、この限界を破る方法としては、膜を密に作らず疎にして分子の塊と塊の間に空気の入りこんだ構造(業界では「ポーラス構造」という)のLow-k 膜を作る工程が検討されている。空気は比誘電率が1.0 なので、原理的には膜の中に空気があるとLow-k 値は低くなる。

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b)SOD 方式

SOD(spin on deposition)とは、スピンコータで液体のLow-k 材料をウェーハに塗布し、これを乾燥させて水分を取り除くことによりLow-k 膜を作る方法である。この方法は生産性が高くコストが安いうえ、水分のあったところを空気に置き換えるとういう原理から、CVD 方式よりも比誘電率の低いLow-k 膜ができる。

ただし、あまり空孔が多い膜は強度が弱くて加工しにくいうえ、その空孔に水分などがたまって取り除きにくいといった問題もある。この膜の強度を高めながらLow-k 値は低くするという材料の開発は容易ではない。そのため、SOD 方式はまだほとんど実用化には至っておらず、今後に期待される技術となっている。

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