次世代の最先端である加工寸法45nm の半導体製造プロセスでは、37 ページで紹介したとおり「液浸リソグラフィー」の技術を加えることでArF 露光装置の延命にメドがついた。そして近年は、その次となる加工寸法32nm の世代でもさらにArF露光装置の延命を図ろうとする動きが出ている。そこで現在最も注目されているのは、「ダブルパターニング」という技術である。
二重露光とは簡単に言うと右の図にあるとおり、1回の露光で作ったレジストパターンの間にもう1回露光をして新たなレジストパターンを作る方法である。こうすることでレジストパターンとレジストパターンの間隔が狭くなり、既存のArF 露光装置でもより微細な回路が作れる。なお、右の図にあるのは二重露光の最も代表的な例で、実際にはこのほかにもいろいろなバリエーションがある。
なお、1 台で数十億円もする先端の液浸ArF 露光装置の台数を増やすと、半導体を作るコストは極めて高くなってしまう。そのため装置メーカーには露光装置のウェーハ処理能力をもっと高めてウェーハ1 枚あたりの処理コストを下げる努力が大きく求められる。
サイドウォールプロセスの一例は右の図に示すとおり。まず露光装置を使って作ったSiO2などのマスクパターンを作る。次にCVD装置を使ってそのマスクパターンを別な材料の膜でいったん覆う。そしてこれをエッチングすると、マスクパターンの両側にCVDで作った膜が壁のように残る。そのあとマスクパターンを取り除くと、その両側にあった膜の壁だけが残り、これがレジストの代わりになる。
CVD 装置は露光装置よりも価格が安いため、このサイドウォールプロセスを使うと二重露光よりも低コストのウェーハ処理が期待できる。ただし、サイドウォールプロセスは二重露光に比べて処理工程数が多いので、生産性の面では新たな工夫も必要となる。
ダブルパターニング以外で液浸リソグラフィーによるArF 露光を延命させる候補としては、「水」よりも屈折率が高い液体を使った液浸リソグラフィーもあり得る。今のところシリコンウェーハの表面や薬液などに影響を与えずに低コストで高屈折率という条件を満たす液体はまだ見つかっていないうえ、高屈折率の液体に対応するレンズの材料も見つかっていないが、もしこれが可能になれば工程数を増やすことなく次々世代に対応でき、現在最有力とされているダブルパターニング技術から本命の座を奪う可能性もある。