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出力の手引きWeb

透明を含むデータに自動墨ノセは要注意

2018.02.26

<2018年2月26日追記>この記事は2015年04月07日の記事の更新です。
この解説では、背景の色がC=100%の場合を例にしていますが、実際には背景の色が複数であったり、100%ではない中間調の場合では、通常透明も乗算透明も含む全ての透明効果を対象に、自動墨ノセによって出力結果が'異なります。従って下記の「この図で赤で囲んだ部分」と記載している範囲だけでなく、全ての透明効果を使う場合は自動墨ノセを行うと、結果が正しくない場合があります。

■概要op_setup.png
EQUIOSやTrueflowなど、多くのRIPで自動オーバープリント機能(以降「自動墨ノセ」)がサポートされています。 これは、データ上のK=100%の文字や図形に、オーバープリントが設定されていない場合に、RIP内部でオーバープリント属性を自動的に付加する機能です。
この機能は、まだDTPに透明のない時代には便利な機能でしたが、デザインとして透明が使われ、印刷側のRIPで自動墨ノセを行うと、期待通りにならない問題がしばしば発生します。 以下の過去記事でも例を示していますが、この症状についてもう一度整理します。
2013年02月18日|Page2013展 - 出力環境に依存しないデータ制作と出力の心得 このエントリーを含むはてなブックマーク

■透明が活きたデータ(PDF1.4以上,PDF/X-4など)
tp_op1.jpg
透明を用いたデータに自動墨ノセ使用するとこの図の様に、自動墨ノセを使用しない場合=PCのディスプレイで見た状態と出力が異なるケースがあります。
言い換えると、この図で赤で囲んだ部分の透明の描画モードを、ディスプレイで見た通りに出力したい場合、RIPでは自動墨ノセを行ってはいけない事を示しています。

2013-02Page2013_015.png

過去記事 の上図で示した例も、「比較(明)」を使用して白く見えている文字が元々は墨文字→自動墨ノセが効く→オーバープリントが付加→透明効果により白文字→白ノセとなるので消えています。


tp_op2.pngまた、この図では不透明度が50%の場合で自動墨ノセを使用すると、最も良く使用される「通常」の描画モードでも(「輝度」でも)画面で見た通りには出力できない事を示しています。

 

■透明が分割統合される場合(PS, EPS, PDF/X-1aなど)
tp_op3.png
透明が使えないPostScript系データやPDF/X-1aなどでは、透明が分割統合され、不透明のオブジェクトに変換されますが、このケースでも自動墨ノセは期待通りの処理にならない場合があります。

 

分割統合により、元はK=100%だったオブジェクトも、色の合成や画像化の処理などの影響で、純粋なK=100%ではない色に変化する場合、RIP内部の自動墨ノセ処理では、K=100%のオブジェクトとは認識されないため、ノセ処理の対象にはならず、ヌケになって出力されます。この場合、分割の切れ目ごとに、透明が関係する部分と関係しない部分で結果がまちまちになります。

この図は非常にシンプルなデータで例を示していますが、実際のデザインではドロップシャドウなど、明示的に透明を指定しなくても、データ上で透明が使われる場合などあり、その影響範囲をデザインから判定するのは難しい場合もあります。

■まとめ

上記の2つの例は、どちらも自動墨ノセの処理に依存した運用の場合にのみ発生する問題で、データ上でオーバープリント指定が正しい(自動墨ノセの必要がない)場合には発生しない問題です。

 ・必要なオーバープリントはデータ上で指定
  →印刷側ではデータ通りノセ処理を行う
 ・分割透明を避けて透明が活きたデータ
  →ネイティブ運用
 ・その他、特色指定やページ原点なども正しく指定

x4-ready.pngこれらの条件を満たしたデータはたとえPDF入稿でなくネイティブ入稿でもPDF/X-4運用に最適なデータであるということから「X4-Ready」と入稿時に指定し、受け取った側もデータ通りの処理を行う、というチェックボックスを設けることを提案いたします。
この「X4-Ready」なデータは、印刷会社内でのPDF/X-4書き出しに最適であるだけではなく、設備上などの理由によりPDF/X-1a出力を行う上でも安全性の高いデータ運用であるといえます。
たとえ、入稿形態としてPDF入稿そのものが困難であっても「X4-Ready」なネイティブ形式での入稿は、出力の安定な運用にプラスになるものです。
もちろん、PDF/X-4運用が推奨ですが、ソフトランディング可能な移行負荷の少ないな運用提案も行っていきます。