そこで、今度はより具体的な例で比較してみます。実際のレイアウトに則した実験で、【図08】のようにイラスト作成の描画手順を解説したレイアウトを、すべての要素をレイアウト変更してよい条件で、できるだけスペースを占有しないデザインの検討です。自由度が高まると混乱してしまいますが、与えられたコンテンツに対して主従関係を付けることで混乱は収まるはずです。
       
    【図08】文章以外の要素が含まれたレイアウト実験
     
A   C
 
     
B    
  (A)縦方向にイラストを配置し、手順は冒頭記号に数値を利用し、数値をインデント処理で目だたせることで識別化を図っています。手順を重視する技術解説書向きといったところです。

(B)(A)の亜流。イラスト間のスペースを確保したことに意味がありインデントをなくしたことにはあまり意味はないでしょう。

(C)あまり意味のないデザインです。イラストが1点であれば方向性もありますが、複数点になると逆効果になりかねません。

(D)(C)の亜流ですが、イラストの配置に方向性があるので評価は低くはありません。また、(C)と異なり文字ブロックは全体をひとつとしているのでイラストが(C)より際だちます。

(E)レイアウトの合理性を優先させるためにイラストを横位置に配置し、各項目は手順番号にが必ず行頭に来るように改行を入れています。

(F)(A)および(B)の亜流で、スペースを出来るだけ確保するためにイラストの配置を調整し、文字ブロックも詰められるだけ詰めています。しかし、もっとも重要なイラストを見にくくしているのでデザイン的には論外となります。

(G)(E)の亜流で、文字ブロックをすべて送り込んでひとつのブロックとしてスペースを稼いでいますが、(E)と比較してこの文章量ではそれほどスペースの違いは発生しませんでしたので、可読性の良い(E)の方がベターでしょう

     
D   F
     
E   G
 
     
    このように、デザインはその時々の材料により料理方法が異なってくるのです。また、全体の中でどのような位置関係に文章が存在しているのかということで、デザインや見せ方もおのずと変わってきます。このように、常に処理内容がグローバルなものかローカルなものかについて注意をはらうことも、デザイナーのアートワークのひとつです。
     
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◆編集=柴田忠男
◆デザイン=向井裕一(glyph)
     
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