そしてコンピュータ時代の前に、日本固有のワープロ専用機文化が花開いた頃、その機能制限から文字は規則正しく配置するしか出来なかったわけです。そして、カーニングもないベタ打ちの文章が読みやすい文章であると、本当に誤解している人が出てしまいました。そして、悲しいことにデザイナーの一部にもそのように誤解されている人が生まれていたわけです。冗談のような話ですが、実際にそのようなデザイナーと会ったことがあります。これも、ある意味でデジタル化の弊害かもしれません。
 欧文なら理解できる文字ごとに字形幅が異なっていることも、実は日本語、とりわけ平仮名や片仮名にも【図01】のようにしっかり存在しています。そしてこの実字形の違いから、前後の文字との隙間がマチマチになり、文字の並びがばらばらに見えてしまうわけです。もちろん本文組みでの話ではありません。あくまでもキャッチコピーなどでの場合に目立ってしまうといった話です。
 当然ながら、何が何でもやみくもに調整すればいいということではありませんが、均等詰めやベタ組みは、日本語書記文化として考えた場合、王道ではないことは確かでしょう。ただし、横組みの文章が増え続けていることもあり、写植の時代から特に横組みを考慮したデザインの書体も数多く出回っているので、均等詰めやベタ組みでもきれいに見えるように組めてしまうこともあり、断言するのは難しいかもしれません。
ちなみに【図02】はヒラギノ明朝Pro W3を使用しているので、正確な解説にはなりません。実はサンプルを用意しようと、色々な文章をひねり出して悪戦苦闘しましたが、他社の書体を提示することも出来ませんし、ヒラギノは横組みも十分に考慮して設計されているので、悪例としてのサンプルを用意できませんでした。そのため【図02】は、イメージとしてとらえてください。

     
【図01】
欧文(仮想ボディの左右センターに配置)と平仮名の仮想ボディーと実字形の違い。仮名も、それぞれが様々な形になっているので、隣り合う文字により見え方やバランスが随分異なってきます。
なお、文字の天地の水平位置が一定ではない仮名の場合、文章によっては水平に見えなくなることもあります(例示書体はヒラギノ明朝Std W5)。
  図1
  仮想ボディの枠
   
【図02】
横組みしているのに全体を見渡すと水平に見えない場合があります(例示書体はヒラギノ明朝Pro W3)。
 
   
    page:12345678