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技術開発ハイライト

The Japan Times(ジャパンタイムズ)の「SEMICON Japan 2024特集号」に、当社が掲載されました。

 

以下、記事の日本語訳です。

 

表面処理技術における長年の強み

京都に本社を置く「SCREEN」は、サステナビリティを重視した半導体製造装置のグローバルメーカー

株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ(本社:京都府京都市)は、今年創立80周年を迎えます。中核製品である半導体洗浄装置の市場シェアは世界ナンバーワンです。Japan Timesでは、岡本昭彦代表取締役 社長執行役員と洗浄要素開発統轄部の髙橋弘明統轄部長にインタビューを行い、同社の半導体洗浄装置の強みとサステナビリティへの取り組みについて聞きました。
同社はSCREENホールディングス傘下の企業ですが、そのSCREENグループは1868年創業で、前身は印刷会社です。SCREENグループには「表面処理技術」「直接描画技術」「画像処理技術」という3つのコア技術があります。それぞれを構成する要素技術は、半導体、印刷、ディスプレー、プリント基板などの市場で展開されています。

 

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SCREENは、ウエハー洗浄装置をカスタマイズしたり最適化したりすることで、ニーズの異なる個別ケースに対応しています。

清浄度の確保

 

コア技術のうち、特に強みを持つのが、主に半導体の洗浄装置で使用される表面処理技術です。
「半導体製造では、各工程の完了時に半導体ウエハーの表面を洗浄することが必要です。洗浄が不適切だったり不十分だったりすると、微細なほこりや汚れが次工程の妨げとなって製品品質に影響することがあり、歩留りの低下につながります」と岡本社長は説明します。
SCREENの超洗浄技術、液体制御技術、乾燥技術が表面処理プロセスを支えています。
「特に注力しているのは超洗浄技術です。洗浄工程は、半導体デバイスの種類やその製造工程により多種多様で、複雑さも異なります。これは、あらゆるニーズを満足しながら、すべての不純物を確実に取り除くための技術です」と髙橋統轄部長は話します。
複雑な工程に対応するため、複数の化学物質を別々に使用する場合もあれば、混合して使用する場合もあり、さらに温度もケースごとに異なるとし、髙橋統轄部長は次のように説明します。
「例えば、高温下で複数の化学物質を別々に使用する必要がある場合、それらが液状で混合しないようにしなければなりません。しかし、最も難しいのは、高温で気化する化学物質が反応し合ったり、装置内の別の薬液と接触したりして、好ましくない結果につながる事態をいかに防ぐかです。化学物質の供給路をクリーンな状態に維持することも大きな課題です」
SCREENは、ウエハー洗浄装置をカスタマイズしたり最適化したりすることで、ニーズの異なる個別ケースに対応し、あらゆる潜在的問題に対処するようにしています。同社のウエハー洗浄装置は、ロジック半導体用とレガシー半導体用という、基本的に2つのタイプに分類されます。ロジック半導体とは、主にスマートフォンやコンピューター上で行う高度な演算処理用に小型化、高性能化した半導体です。一方、レガシー半導体は、自動車、電気機器、家電製品などに使用されることが多い半導体を指します。
「これらの2つの領域の中でも、半導体製造工程は実に多様で、ウエハー洗浄装置に求められる水準と機能もさまざまです」と髙橋統轄部長は指摘します。

 

 

研究開発からのサポート

img_spe_tech2-02j.pngSCREEN研究開発部は「基礎研究」「要素技術開発」「製品開発」「装置評価」の4領域で構成され、各グループが顧客別の担当チームと緊密にコミュニケーションを取っています。
高度で時間のかかる基礎研究については、滋賀大学、三重大学などの大学や、国立研究機関と共同で取り組んでいます。基礎研究の成果は、要素技術の開発に活用しています。具体的には、ベルギーの研究開発機関であるimec(Interuniversity Microelectronics Centre)との共同開発、フランス原子力庁が仏電子情報技術研究所と実施する共同研究への参加など、世界の最先端コンソーシアムと連携した研究開発を進めています。
製品開発と装置評価の領域では、主に他社と共同で新たな技術や装置の開発、評価を行っています。
「バルブやフィルター、化学物質のメーカーなどサプライヤーも含め、長く複雑な半導体サプライチェーンで他社と協力することは重要です」と髙橋統轄部長は言います。開発した技術や装置は、その後さらに顧客の生産拠点での評価を経て、現場の生産ラインに導入されます。
髙橋統轄部長は、従来からエンジニアの勘や経験に頼ってきた場面も含め、研究開発プロセスの全ての段階で科学的根拠に基づく手法を採用しているとし、「科学的根拠に基づく最適ソリューションを追求することで、技術開発をさらに精緻化したいと考えています」と話します。
こうした活動の具体例として、コンピューターシミュレーションの活用が挙げられます。「コンピューター流体力学を例にご説明しましょう。この技術は、ウエハー洗浄装置内で水平回転するウエハー表面に液体を供給するとどのように広がるかをシミュレーションすることで、ウエハー全体に液体を行き渡らせる最適方法を探すために使用します」(髙橋統轄部長)装置で使用する乾燥技術についての例も挙げられました。「ウールのセーターを不適切な方法で洗濯すると縮んでしまうように、半導体の構造も乾燥による影響を受けます。現在当社では、日本のある大学との共同研究の一環として、半導体のナノ構造が受ける影響を正確に想定する代わりに、計算とモデリングにより影響を可視化する取り組みを進めています」(髙橋統轄部長)

 

 

 

「半導体の製造には、大量の電力と純水を使用します。これらの消費を削減することは、サプライチェーン全体にとって大きな課題です」

サステナビリティの追求

img_spe_tech2-03j.pngステークホルダーとの共同研究開発が必要とされるのは、洗浄技術分野にとどまりません。基本的な資源保護も課題です。「長い半導体製造工程全体で、大量の電力と純水を使用します。これらの消費を削減することは、サプライチェーン全体にとって大きな課題です」(岡本社長)
シンガポールでSCREENの現地法人トップを5年半務めた後、2021年に帰国し、4月にSCREENセミコンダクターソリューションズの社長に就任した岡本氏は、この数年間、顧客の間でサステナビリティへの関心が高まるのを感じてきました。髙橋統轄部長は、この流れを無視することはできないと言います。
「約3年前から、サステナビリティ関連の課題のみを扱う技術会議を一部のお客様と定期的に開催しています。お客様から受けるサステナビリティ関連の要望は、ますます細かく、具体的になっています」
岡本社長は、この動きを自社の価値を高める機会だと考えており、半導体業界の環境サステナビリティを向上させるため、引き続き取り組んでいくと話します。

滋賀県彦根市にある同社工場では、再生可能エネルギー由来の電力を使用し、従来よりも省エネルギー性能の高い施設を稼働しています。製造時にも使用時にも環境負荷の少ない製品を推進するため、同社では製造する製品に対して、独自の評価基準を策定しています。この基準を満たす製品は「グリーンプロダクト」として認定しています。環境性能の高い製品を生み出すための取り組みとして、消費電力と二酸化炭素排出量の削減、化学物質使用量の削減、あるいは有害性の低い代替物質の検討などを行っています。「これにより、新たに発売するすべての製品をグリーンプロダクトと表示できるようにします」(髙橋統轄部長)
岡本社長は、既存装置の省エネ・節水性能向上への要求もあると明かし、「当社のウエハー洗浄装置は、内部の洗浄に加熱した超純水を使用します。従来、この水は1回限りの使用でしたが、循環させて再利用するシステムを開発しました。お客様から大変好評のため、世界レベルでの展開を目指しています」と話します。
岡本社長は、純水を大量に使用する半導体洗浄プロセスを改善する取り組みが前進していることに触れ、「水の使用量を追跡、可視化した上で、削減できる方法を調査するため、水管理アプリケーションの使用を開始しました。このアプリケーションで十分なデータを収集できたため、水使用量削減へ向けた取り組みを開始することにしています」と言います。
しかし、問題なのは量だけではありませんでした。2年前に開始した二酸化炭素排出量に関する調査で、同社のあらゆる装置の中で二酸化炭素排出量が最大となるのは、超純水を使用した場合であることが判明しました。
その理由について髙橋統轄部長は、従来の加温装置は水が必要ない期間も動作するためだと説明します。その目的は、水温低下を防ぐため、そして洗浄装置内の水流の一定に保つためです。
今回開発した新たな温水器は、「スマート消費」という概念に基づき、必要な期間のみ装置に水を供給します。
「この新たな装置のおかげで、超純水の使用量だけでなく、水関連の消費電力も85%削減でき、排出量削減につながりました」(髙橋統轄部長)
岡本社長は、サステナビリティに関しては、国により優先事項が異なると指摘します。最優先事項は、それが水であれ、電気であれ、それ以外であれ、その国の環境、社会、経済、政治の状況などさまざまな要素で決まります。SCREENでは、各国の顧客ニーズに応じた取り組みを展開しています。
一方、二酸化炭素排出量は半導体サプライチェーン全体で一丸となって対処すべき課題であると強調します。半導体業界の3,000社を超える企業が加盟する国際半導体製造装置材料協会(SEMI)内に設置された「半導体気候関連コンソーシアム(SCC)」の一員として、SCREENは率先してサプライチェーンの二酸化炭素排出について高度な分析を行い、効果的な活動を他のSCCメンバーと共有することを目指しています。SCREENがSCCで参加するプロジェクトに、「Zeroboard」という、温室効果ガスに関するデータを計算し、可視化できるクラウドベースのツールを使用するものがあります。
「これを使用して、サプライチェーンのどこで環境負荷が高いかを具体的に把握することで、どうすれば効果的に抑制できるかがより明確になります」(岡本社長)
さらに、IMECおよび国内外の他のステークホルダーとも連携して活動しており、環境サステナビリティにおけるサプライチェーンの技術的限界が広がったとも話します。「しかし、結果的にコスト増大に直面しています」と言い、環境負荷低減へ向けた業界の前進を停滞させないためにも、そうしたコストに対応するために協力するだけでなく、国の支援を求めることも重要だと強調します。

 

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エンジニアにとって、社会が何を求め、どのようなテクノロジーが役に立つのかを考える発想力は一層重要になっています。

半導体の恩恵を世界へ

 

SCREENセミコンダクターソリューションズの顧客の80%以上は、台湾、韓国、米国、欧州、中国といった国や地域の企業です。髙橋統轄部長は、場所に関係なく時間価値をお客様に提供することを目指すとし、「製品の開発、設置、ダウンタイム、復旧も含め、装置の製造と運転の全段階で時間を短縮し、世界中が常に最先端の半導体から恩恵を受けられるようにするには、装置の知能を向上させる必要があります」と話します。
「その先にあるのは、テクノロジーを駆使して『デジタルツイン』を構築することです。デジタルツインとは、現実世界で収集したデータに基づき生成され、リアルタイムで絶えず更新される仮想モデルです。デジタルツインを使って、科学的、理論的裏付けから目指すべき設計を正確に分析し、それに沿って製品を開発できるようになれば、必然的に納期短縮や信頼性向上につながるはず」だと言います。
しかし、製造が変わると、エンジニアに何を期待するかも変わることになります。
「エンジニアにとって、社会が何を求め、どのようなテクノロジーが役に立つのかを考える発想力、また、その発想を実現するためにお客様やその他のステークホルダーの理解を得るためのコミュニケーション能力は一層重要になっています」(髙橋統轄部長) 岡本社長は、エンジニアだけでなく社員全員に対し、自分たちの仕事は直接的にも間接的にも社会的価値があると自信を持ってほしいと言います。「当社の装置と環境活動は社会に直接貢献しています。一方、当社の洗浄技術なしでは製造できない半導体も、世界中で社会課題の解決に貢献しているのです」

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本記事は、株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズが提供しています。