◆ところで合成フォントを作成する時、かな文字を大幅にエフェクトさせても、可読性はそれほど損なわれないことが分かります。あるいはもっと極端に、通常の文章の平仮名部分を伏せ字にしてしまっても、意外に意味が通じてしまいます。
これは、日本語表記に漢字を使用しているからです。もちろんこれは表記記号としての文字に限ったことで、言語体系としては、シベリアから樺太経由で南下したアルタイ語とインドネシア語、ハワイ語などが属する南東語(オーストロネシア語*)族が混じったことで形成されているという説が高いようですが、アルタイ語**に含むことに否定的な論文もあり、個人的には近隣諸国の国民性などを垣間見ると、言語に関しては文字とは別で単純に中国大陸からの伝承とはいえない面が強いように感じています。
そこで【図07】のように『文字はどこまで潰せるか?』という極端で少し意地悪な実験をしてみました。
ヒラギノ明朝Pro W3をベースに、仮名文字のみを水平比率75%、50%、25%に変形させた状態での可読性と、更に仮名文字のサイズを75%、50%、25%に縮小した状態での可読性の検証です。もっとも強い設定では仮名文字の可読性は絶望的ですが、日本語の場合はこれでも充分に意味が通じてしまいます。もちろんこれは極端な検証ですが、パッケージデザインの取り扱い説明文などでは、スペースを出来るだけ稼ぐために行間をゼロと指定する場合が少なくありません。しかし、常識的に文字間や行間がゼロというイメージがわかないのも確かです。ところが、ちょっとしたトリッキーな処理を行なうことで可読性はそれほど悪くなく納めてしまうことが出来ます。まず【図08-1】のように水平方向を扁平処理し、カーニング処理を自動設定とし、トラッキングでマイナス値を適宜設定ても時間ゼロに近い状態を得ますが、トラッキング設定で一括処理後に均等ツメを行なってから、仮名文字や句読点前後を手詰めで調整していきます。最終的に、それでもどうしようもなくなってしまう場合は、カタカナの単語やかな文字が続くような箇所のみ若干強めの値で水平方向に扁平処理を行ない、むりやり納めることが可能です。
 
*オーストロネシア語族
台湾から東南アジア島嶼部、マダガスカル、南太平洋に広がる言語群。日本語では南島語族とも訳され、台湾原住民の言語が学術的に原形を保っているとされる。西暦5世紀頃には、フィリピン、インドネシア、マレー半島からインド洋を越えてマダガスカル島や、ハワイ諸島など南太平洋の島々に広がったが、パプア・ニューギニアの大部分とオーストラリアの原住民の言語は学術的には含まない。
**アルタイ語族
主に北アジアの民族によって話される諸言語を示し、ツングース諸語(満州語など)、モンゴル諸語(モンゴル語、ブリヤート語など)、テュルク諸語(トルコ語、ウズベク語、カザフ語など)と大きく三つに分類する学説もあるが、三グループ間は数詞などの基礎語彙がまったく異なるために、否定的な学説も多い。
     
     
【図07】
 
ヒラギノ明朝Pro W3(文字サイズはすべて30Q)上から水平比率100%、75%、50%、25%
 
ヒラギノ明朝Pro W3(かな文字、半角文字を75%に縮小)上から水平比率100%、75%、50%、25%
 
ヒラギノ明朝Pro W3(かな文字、半角文字を50%に縮小)上から水平比率100%、75%、50%、25%
 
ヒラギノ明朝Pro W3(かな文字、半角文字を25%に縮小)上から水平比率100%、75%、50%、25%
 
 
【図08-1】文字間調整
上下ともにヒラギノ明朝Pro W3/13Q/行送り20H
InDesign CS2で作成
文字送りを[文字パレット/カーニング]で「オプティカル」に設定【図09】
 
     
?【図10】の[合成フォント]設定に変更(仮名、半 角欧文、半角数字の水平比率を90%に設定)  
     
     
【図9】   【図10】
     
     
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