◆デスクトップパブリッシング(DTP)が注目され始めた頃から、文字組みはページレイアウト上での話だけというのが主流でした。大量の文章を効率よく処理するためのDTPですから、当然の流れということになります。
ところが私は、これ以前からパッケージ類のデザイン*、ロゴタイプ、あるいはキャッチフレーズの視覚化といった仕事を中心としていたために、世の中でいうところの支流、いや亜流と揶揄される処理が私にとっての主流という逆転状態を長く続けてきました。もっとも、どちらが主流か支流かといった論争は私にとっては無意味なことでしかありません。
強いて私論を述べれば、美意識や価値観は不変ではないので、固定概念で語るべきではないということでしょうか。これについては連載の後半で触れてみたいと思います。
さて、アナログ時代のデザイナーは文字組み処理は指定だけで、あとは写植屋さんにお任せというワークフローでしたが、初期のDTP(満足の出来る文字組みを行なうためには手動による詰め処理に頼わざるを得なかった)と同様に写植の切り貼りで手動のツメ処理を行なっていました。この作業が、恐ろしく作業時間を圧迫していたのは確かです。例えば、時々入ってくるチラシ類の仕事では、常時利用していた写植屋さんの詰め処理があまりにも下手であったので、均等詰めのベタ打ち指定で、キャッチコピー類を手詰めするという流れが当然という経験が長かったことも少なからず影響しています。
しかも、ベタ打ちのパラパライメージを出来るだけ回避するために、かな文字の大きい「ゴナ」や「ナール」を強引に利用していました(仮想ボディーの大きな書体は文字幅の差が少ないため比較的詰めやすい)。要するに、入社したての私が会社と取引している写植屋を変更することなどできなかったわけです。
結局、仕事で写植を利用する必要がある時は、予め手詰め処理を想定し、各行に含まれている仮名文字やアルファベットの文字要素に注意しながら行末(右端)を長めの成り行き指定し、それを詰めていくというわけです。ですから、【図01】のように、支給される文字原稿を必要に応じて新たに方眼紙に書き写すと入った作業も行なっていました。
*パッケージデザインという表現には、そのものずばり、箱や包装紙などの包装形態をデザインする意味と、それらパッケージ類に施すグラフィックデザイン処理の意味が含まれていますが、私の場合は後者のグラフィックデザイン処理を意味しています。
     
       
【図01】
手で詰めることを想定して各行の文字詰めを決め、写植を発注する(上)。手詰めで下図のように決められた行長の箱組みに整形する作業を行なう。(例示書体はヒラギノ角ゴStd W2)
     
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