株式会社アイワード 様 Proof Jet F1100AQ事例
印刷機の稼働率が向上
ニーズに合わせた校正の提案が可能に
株式会社アイワードは2020年10月、本紙校正用インクジェットプリンター「Proof Jet F1100AQ」を導入した。
品質要求の高い専門書籍の印刷・製本を手掛ける同社が、PJ-F1100AQの導入に至った決め手や、現状とその効果を、
執行役員 部長 プリンティングディレクターの浦有輝氏、プリプレス部出力検版部 部長の齊藤裕司氏に聞いた。
User Report
アイワードは1966年の設立以来、ブック印刷をメイン事業として技術の向上と生産体制の整備を行い、社内にはブック印刷のスペシャリストを多数擁している。手掛ける書籍は医学、化学、地理・歴史などの専門書や教科書、その副読本などが中心。顧客のほとんどは首都圏の出版社であり、その技術は顧客から高い信頼を得ている。 同社では早くからブック印刷制作の自動化に取り組み、近年ではスマートファクトリー化にも積極的に取り組んでいる。2017年には、営業・生産管理・プリプレスの各システムと石狩工場の印刷設備をつなぐ、スマートファクトリーのインフラを構築。さらに2021年10月には、製本工程のスマートファクトリー化を実現した。 そんな同社の自動化技術の先駆けは、1980年に発表した「文字情報処理システム」である。今では、出版社の「出版DX」を支援する「情報処理・システム事業」と発展している。
さらに、独自開発の「アイワード・デジタイズ・システム」を活用した「褪色したカラー写真の復元事業」など、ブック印刷事業に必要な要素技術を自社で開発してきた。 浦執行役員は「書籍を形にする上で必要な技術は『自動化』です。ここがしっかり確立できれば、お客様に安全・安心を提供できます」と語る。
本刷りに近い色校正を実現
同社では、印刷物の最終確認は本機色校正、あるいはインクジェットプリンターによる簡易色校正で、顧客に確認を取ってきた。簡易色校正の場合は、光沢のある専用紙をカラー基準にしているため、光沢のないマット紙や上質紙、光沢が少ない嵩高紙など、紙の特性による色調の違いがイメージしにくいという難点があった。
浦執行役員はさらに、「当社では本機色校正の需要が高く、本機色校正と本番の仕事の時間が同じくらいになることもあり、予備紙の問題もありました。また、同業他社には本機色校正を代替できるソリューションがあるとも聞いていました」と語る。
そこで、本機色校正を代替できるプルーフソリューションが求められることになったが、それには当然、「自動化」も重要なポイントになる。
そこで、相談を受けたSCREEN GP ジャパンは、「Proof Jet F1100AQ」(以降、PJ-F1100AQ)の導入を同社に提案した。SCREEN GPジャパンには、同じ本紙校正用インクジェットプリンターとして、品質面で差のない「ProofJet F780 MARKⅡ」もあったが、生産性と自動化の面で同社の要求を満たせないと判断したのだ。
PJ-F1100AQは、最大1,100×800mm、厚さ1.2mmまでの用紙に対応し、菊全判で11枚/時の生産性(1,200×900dpi)を備え、自動化の面でも標準装備された自動給排紙装置により、人手に頼らない連続出力が可能で、省力化にも貢献する。
導入の際には、印刷機と色を合わせるためのカラーマネジメントに不安があったというが、SCREENのカラーマネジメントソフト「LabProof SE」を使い、複雑な調整を行うことなく、プルーフの出力に最適な環境を構築している。
「カラーマネジメントについては、SCREENさんにお任せしました。導入した後は、色が安定するかどうかが不安でしたが、毎日メンテナンスしていることもあり、問題なく運用できています」(齋藤部長)
また、当初はヘッドからインクが吐出されないなどのトラブルもあったが、SCREEN GPサービス東日本がすぐに対応し、現在ではスムーズに運用しているという。
導入により、本機色校正がPJ-F1100AQに代替されて時間が削減されただけでなく、印刷機の稼働率も向上し、顧客である出版社の支給する紙で色校正を提出できるようになり、予備紙の課題も解決した。
また、自動給排紙装置により、PJ-F1100AQで色校正を出力する場合には、人を配置しなくても作業が進むため、省力化の面でも大きく貢献している。
齋藤部長は「室温22~23度、湿度65%前後で管理しているので、紙詰まりもありません。当社で一番使用するマット紙では、気付いたら出力が終わっているほど安定して稼働しています」と評価する。
さらに、PJ-F1100AQ、本機色校正、インクジェットによる簡易色校正と、出力方法に選択肢が増え、顧客のニーズや予算に合わせて色校正を提案できるようになった。
なお、「シャドウの諧調表現やツヤ、グロス感の不足といった課題を残しているので、お客様には少し説明が必要です」(浦執行役員)とのことだが、このように導入時の目標であった本機色校正時間の短縮や予備紙の問題の改善、自動化運用が前進した。
現在、残された課題についても、SCREENへ協力を要請している。
差別化のため、カラーに注力
「出版社は関東圏に集中しています。その中で当社をアピールするためにも、難しいカラー印刷の仕事を引き受け、お客様の選択肢を増やし、ニーズに応えていく必要があります。そして、ブック印刷に複合する要素技術で付加価値を高め、総合力でお客様に選んでいただきたい」と浦執行役員は語る。
さらに、「後工程のスマート化は実現しました。次に取り組むのは前工程の自動化です。そのためには、お客様と一緒に走りながら構築していかなければと考えています。それができなければ、ブック印刷専門会社として生き残れません。前工程を自動化し、企画・編集段階から印刷・製本まで、本当の意味での一貫体制を確立することが不可欠です。今後もSCREENさんと協力して、出版文化を守っていきたいと思います」と将来を見つめる。