横組みを考慮していない書体で組むと、文字の流れがオレンジ色の線のように見えてしまいます。写植の時代にはこのような現象が比較的多く、随分と悩まされ、先輩に叱咤されながら幾度となく見かけ上で水平になるように調整したことを思い出しました。つまり、見た目を優先させることで、機械的であった写植処理に嘘をつくわけです。
 その点、コンピュータソフトではデジタル処理=正確、あるいはコンピュータ用に新たに設計されたというイメージが強いので、なんとなく心理的に嘘がつきにくいのではないでしょうか。大切なのはどのように見えるかという結果です。機械に任せるだけではセンスは退化してしまいます。もっと自分の目を信じましょう。
 例えば、文字ブロックへ通常ではない角度を与えてレイアウトすると、平行に見えなくなってしまう場合があります。疑いの目で、絶えず神経を張り巡らしていないと気が付かないような部分かもしれません。しかし、注意しなくてはならない大切な問題なのです。これは、どちらかというと欧文の、それもスクリプト系に多く発生する目の錯覚なのですが、ヒラギノ行書体のような手書き風の文字にも発生しやすい現象なので、数値的な処理ではなくあくまでも自分の目で確認しながら微調整を行なう習慣をつけるとよいでしょう。
 例えば【図03】のようなコピーも、一行で表示すれば不自然な見え方はしませんが、角度を与えて単語を適当に分断したりすると、それぞれの文字ブロックがお互いに干渉し合い、平行が狂って見えてしまうことがあります。いわゆる目の錯覚です。
 これは書体や文字の組み合わせにより千差万別なために、『注意すべきはこの組み合わせ』という断定がなかなかできません。当然、本文中などでの調整は無意味ですが、キャッチコピーなどの目立つ文字ブロックでは、積極的に調整を行なった方がよいでしょう。

   
【図03】
Adobe Brush Script Std Mediumを使用した実験。45度の角度を付けた3つの文字ブロックとオレンジ色の文字ブロックイメージは、左から無修正の文字ブロックと論理的な文字ブロックイメージ、真ん中は無修正の文字ブロックと実際に見える文字ブロックのイメージ、右が、平行に見えるように調整した文字ブロックと、調整のために若干の回転処理を行なった文字ブロックイメージとなります。
 

   
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