川畑▲ ここまで1920年代後半を代表する描き文字集をみながら、描き手の特徴や発想、問題点、そして東京と大阪の異なりをみてきました。ある程度、その違いがみえてきたと思います。 ここからは書体開発派の雄、矢島周一の『図案文字大観』[★図23]以降の活動にスポットをあてたいと思います。 『図案文字大観』の刊行後、矢島周一は新たな実験をはじめます。文字の幾何学化です。 まず1928年に刊行された『図案文字の解剖』からみていきます。内容はひらがなやカタカナをコンパスで描けないかという、野心的な実験が中心です。こうした実験と取り組んだ理由について、矢島は序文にこう著わしています。